ICFで用いられる用語の定義
健康状態 |
疾病,変調,傷害など |
心身機能 |
身体系の生理的機能(心理的機能を含む) |
身体構造 |
身体の解剖学的部分 |
機能障害 |
心身機能または身体構造上の問題 |
活動 |
課題や行為の個人による遂行のこと |
参加 |
生活・人生場面への関わりのこと |
活動制限 |
個人が活動を行うときに生じる難しさのこと |
参加制約 |
個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと |
環境因子 |
人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと |
背景因子には,環境因子のほかに個人因子がありますが,ICFでは,社会的・文化的に差があるため,定義づけしていません。しかし,それまでの人生の経験など個人的なものであることには間違いありません。
これらのうち,「心身機能・身体構造」「参加」「活動」は,「生活機能」という概念でまとめられています。
国際生活機能分類(ICF)に関する出題には,タクソノミーⅠ型とタクソノミーⅢ型の問題があります。
定義などを直接問うのは,タクソノミーⅠ型です。
タクソノミーⅢ型は,知識を使って,事例などを解釈することで,答えを出すタイプの問題です。
今回は,タクソノミーⅢ型です。タクソノミーⅠ型よりもかなり手ごわい問題となります。
それでは今日の問題です。この問題は,先日も取り上げたばかりですが,もう一度復習します。
第34回・問題2
事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)のモデルに基づく記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(40歳)は,脳性麻痺のため,歩行訓練をしながら外出時は杖を使用していた。しかし麻痺が進行し,電動車いすを使用するようになり,電車での通勤が困難となった。その後,駅の階段に車いす用の昇降機が設置され,電車での通勤が可能となった。
1 疾患としての脳性麻痺は,「個人因子」に分類される。
2 電動車いす使用は,「心身機能・身体構造」に分類される。
3 杖歩行が困難となった状態は,「活動制限」と表現される。
4 電車通勤が困難となった状態は,「能力障害」と表現される。
5 歩行訓練は,「環境因子」に分類される。
用語を知っていることを前提として,その知識を事例に当てはめて考える典型的なタクソノミーⅢ型です。
それでは,解説です。
1 疾患としての脳性麻痺は,「個人因子」に分類される。
この事例の中で,個人因子と言える情報は少ないですが,「40歳」は個人因子だと言えます。
脳性麻痺は,健康状態に分類されます。
ICFでは,健康状態と背景因子が生活機能(「心身機能・身体構造」「活動」「参加」)に影響を及ぼすと考えます。
2 電動車いす使用は,「心身機能・身体構造」に分類される。
この事例の中の「心身機能・身体構造」は,麻痺が進行していることです。
電動車いす使用は,環境因子に分類されます。
3 杖歩行が困難となった状態は,「活動制限」と表現される。
これが正解です。
歩行は活動,杖は環境因子,杖歩行が困難になった状態は,活動制限と表現されます。
4 電車通勤が困難となった状態は,「能力障害」と表現される。
能力障害は,ICFの用語ではなく,ICIDHで用いられていた用語です。
電車通勤は「活動」,電車通勤が困難となった状態は「活動制限」と表現されます。
5 歩行訓練は,「環境因子」に分類される。
この事例の中にある環境因子は,杖,電動車いす,電車,昇降機などです。
歩行は「活動」,歩行訓練も「活動」に分類されます。