日本で知られる知能検査として,ビネー式とウェクスラー式があります。
どちらも改訂を重ねていますが,古いのはビネー式です。
ビネー式を開発したビネーは,知能指数という概念を提唱した人物です。
臨床現場でよく用いられるのは,ウェクスラー式です。
ウェクスラー式の知能検査には,低年齢児用のWPPSI(ウィプシ),子ども用のWISC(ウィスク),成人用のWAIS(ウェイス)があります。
ウェクスラー式の対象年齢
WPPSI-Ⅲ |
2歳6か月~7歳3か月 |
WISC-Ⅳ |
5歳0か月~16歳11か月 |
WAIS |
16歳0か月~90歳11か月 |
発達検査は,対象年齢が厳格です。
対象年齢以外では,適正な検査を行うことができません。
しかし,公認心理師の試験ではないので,対象年齢をきっちり覚える必要はありません。
覚えるのは
低年齢児用 → WPPSI(ウィプシ)
子ども用 → WISC(ウィスク)
成人用 → WAIS(ウェイス)
これだけで十分です。近年の国試では,対象年齢が問われるので,これだけは覚えることが必要です。
WAISとWISCで検査できるもの
全検査IQ |
言語理解 |
知覚推理 |
|
ワーキングメモリ |
|
処理速度 |
この4つの指標を測定します。
このうちのワーキングメモリは,聴覚記憶(耳で聞いたものを想起する)に関する知能指数を測定します。
4つの指標によって,得意なものや不得意なものがわかります。それによって,指導の方法や選択する職業の参考にすることができます。
全検査IQと4つの得点指標の数値の読み方
130以上 |
非常に高い |
120~129 |
高い |
110~119 |
平均の上 |
90~109 |
平均 |
80~89 |
平均の下 |
70~79 |
低い |
69以下 |
非常に低い |
それでは,今日の問題です。
第34回・問題13
心理検査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ウェクスラー児童用知能検査第4版(WISC-Ⅳ)は,対象年齢が2歳から7歳である。
2 ミネソタ多面人格目録(MMPI)では,日常生活の欲求不満場面を投影法により測定する。
3 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は,高齢者の抑うつを測定する。
4 ロールシャッハテストは,図版に対する反応からパーソナリティを理解する投影法検査である。
5 矢田部ギルフォード(YG)性格検査は,連続した単純な作業を繰り返す検査である。
心理検査には,さまざまな種類がありますが,社会福祉士の国家試験で出題されているものはほぼ固定されています。
参考書に書かれているものは,確実に覚えておきたいです。
なお,今日の問題には出題されていませんが,心理検査でもう一つ重要なものとして,カットオフ値(カットオフポイント)というものがあります。
カットオフ値とは,検査結果の分かれ目となる点数のことです。
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の場合は,30点満点のうちの20点がカットオフ値です。
この点数よりも低い場合は,認知症が疑われます。できるものが得点となるからです。
逆に点数が高い方が可能性が高いものもあります。
たとえば,抑うつ状態を調べるBDI(ベック抑うつ質問票)は,当てはまるものの数が多いほど抑うつ状態の可能性が高くなります。
それでは,解説です。
1 ウェクスラー児童用知能検査第4版(WISC-Ⅳ)は,対象年齢が2歳から7歳である。
WISC-Ⅳの対象年齢は,5歳0か月~16歳11か月です。
2歳から7歳(正確には,2歳6か月~7歳3か月)を対象とするのは,WPPSI(ウィプシ=低年齢児用)です。
2 ミネソタ多面人格目録(MMPI)では,日常生活の欲求不満場面を投影法により測定する。
日常生活の欲求不満場面を投影法により測定する心理検査(パーソナリティ検査)は,PFスタディです。
ミネソタ多面人格目録(MMPI)もパーソナリティ検査ですが,投影法ではなく,質問紙法です。
3 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は,高齢者の抑うつを測定する。
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は,認知症の可能性を調べる検査です。
認知症のスクリーニング検査として,HDS-RのほかにMMSEが知られます。MMSEの点数もHDS-Rと同じ30点満点ですが,カットオフ値はHDS-Rよりも少し高い23点あたりです。
4 ロールシャッハテストは,図版に対する反応からパーソナリティを理解する投影法検査である。
5 矢田部ギルフォード(YG)性格検査は,連続した単純な作業を繰り返す検査である。
矢田部ギルフォード(YG)性格検査は,質問紙法によるパーソナリティ検査です。
連続した単純な作業を繰り返す検査は,作業検査法です。日本では,内田クレペリン検査が知られます。
内田クレペリン検査は,1桁の数字の足し算を時間内で行う作業検査法です。
開始後の成績はよくて,そのうち,成績が下がります。
終わりに近づくとまた成績が良くなります。
そこで休憩します。
休憩後の最初の成績はよくて,そのうち,成績が下がります。
終わりに近づくとまた成績が良くなります。
これが良い結果とされます。