近年の国家試験で,発達心理学の中でも発達段階で出題されているのは,エリクソンとピアジェのものです。
今回は,そのうちのピアジェを取り上げます。
発達段階は以下の4段階です。
感覚運動期(0~2歳) ※乳児期
↓
前操作期(2~7歳頃) ※幼児期
↓
具体的操作期(8歳頃~11歳頃) ※小学期
↓
形式的操作期(12歳以降) ※中学期
年齢は目安です。発達にはもちろん個人差があります。
人の発達は,下の段階には戻りません。
防衛機制では「退行」(いわゆる赤ちゃん返り)がありますが,本当に心身の発達が下の段階に戻っているわけではなく,防衛機制によって,心理的に退行しているだけです。
それでは今日の問題です。各段階の年齢の目安がおおよそ理解できていれば,ピアジェの発達理論は推測できます。
第34回・問題10
ピアジェ(Piaget,J.)の発達理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 感覚運動期には,「ごっこ遊び」のようなシンボル機能が生じる。
2 前操作期には,元に戻せば最初の状態になることが理解され,可逆的操作が可能になる。
3 前操作期には,自分の行動について,手段と目的の関係が理解できるようになる。
4 具体的操作期には,コップから別の容器に水を移したときに液面の高さが変化しても,量は変わらないことが理解できる。
5 形式的操作期には,思考の自己中心性が強くみられる。
ピアジェの発達段階は,言葉がちょっと難しいですが,それをクリアすれば,それほど難易度は高くありません。
それでは,解説です。
1 感覚運動期には,「ごっこ遊び」のようなシンボル機能が生じる。
「ごっこ遊び」のようなシンボル機能が生じるのは,前操作期です。
2 前操作期には,元に戻せば最初の状態になることが理解され,可逆的操作が可能になる。
可逆的操作(元に戻せば最初の状態になること)が可能になるのは,具体的操作期です。
3 前操作期には,自分の行動について,手段と目的の関係が理解できるようになる。
手段と目的というのが難しいですが,以下のような関係です。
泣く(手段)
↓
お母さんがあやしてくれる(目的)
つまり,お母さんにあやしてもらいたいと思った場合,泣くという行動をするということになります。
この関係が理解できるようになるのは,乳児期,つまり感覚運動期です。
4 具体的操作期には,コップから別の容器に水を移したときに液面の高さが変化しても,量は変わらないことが理解できる。
これが正解です。
コップから別の容器に水を移したときに液面の高さが変化しても,量は変わらないことが理解できる,つまり,保存の概念が確立されるのは,具体的操作期です。
前操作期は,可逆的操作(元に戻せば最初の状態になること)ができない段階であるためにその名がつけられています。
5 形式的操作期には,思考の自己中心性が強くみられる。
思考の自己中心性が強くみられるのは,前操作期の特徴です。