近年の国試で,発達心理学の中でも発達段階で出題されているのは,エリクソンとピアジェのものです。
今回は,そのうちのピアジェを取り上げます。
発達段階は以下の4段階です。
感覚運動期
↓
前操作期
↓
具体的操作期
↓
形式的操作期
人の発達は,下の段階には戻りません。
防衛機制では「退行」(いわゆる赤ちゃん返り)がありますが,本当に心身の発達が下の段階に戻っているわけではなく,防衛機制によって,心理的に退行しているだけです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題12 ピアジェ(Piaget,J.)の認知発達理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 体積や量の保存の概念は,感覚運動期に獲得される。
2 自己中心的な思考は,形式的操作期の特徴である。
3 抽象的な論理的思考は,前操作期に発達する。
4 可逆的な操作は,具体的操作期に可能となる。
5 対象の永続性は,形式的操作期に獲得される。
知識ゼロの人は,消去できる選択肢がないので,5分の1の確率でしか正解することができません。
しかし,これが国試の理想形です。勉強していない人でも解ける問題ではだめなのです。
それでは解説です。
1 体積や量の保存の概念は,感覚運動期に獲得される。
保存の概念は,見かけが変わっても元と同じであると認識できることをいいます。
保存の概念を獲得できるのは,具体的操作期です。
2 自己中心的な思考は,形式的操作期の特徴である。
自己中心的な思考は,前操作期にみられる特徴です。
この時期には,まだ他者の立場で考えることができないからです。
3 抽象的な論理的思考は,前操作期に発達する。
抽象的な論理的思考は,具体的操作期からできるようになり,形式的操作期に発達していきます。
4 可逆的な操作は,具体的操作期に可能となる。
可逆的な操作とは,元に戻しても同じものだととらえることができることをいいます。
可逆的な操作ができるようになると,保存の概念が獲得されていきます。
5 対象の永続性は,形式的操作期に獲得される。
対象の永続性は,目の前に見えなくなっても,存在していることがわかることをいいます。
対象の永続性が獲得されるのは,感覚運動期です。
さて,それでは今回もまとめてみましょう。
感覚運動期 |
対象の永続性が獲得される。 |
前操作期 |
自己中心的な思考が特徴である。 保存の概念は獲得されていない。 |
具体的操作期 |
可逆的な操作ができるようになり,保存の概念が獲得される。 |
形式的操作期 |
抽象的な論理的思考ができるようになる。 |
またまた立派な資料が出来上がりました。