今回から,科目は「心理学理論と心理的支援」を取り上げます。
苦手とする人も多い科目かと思いますが,以前のカリキュラムの「心理学」の時と比べると,取り組みやすい科目になったのではないかと思います。
以前の時は,社会福祉士・精神保健福祉士にどんなことを学んでほしいのか明確ではなかったのかしれません。
また,10問もあったために,「こんなことを学んでどうする?」といった問題も出題される問題も出題することができる余裕もあったのかもしれません。
社会福祉士・精神保健福祉士が心理療法を実際に行うことはないかもしれません。しかし,心理療法的視点をもっていると,クライエントに対する相談援助も変わってくることもあるでしょう。
さて,今日のテーマは,「内的帰属・外的帰属」です。
これは,ある結果の原因を自分に向けるのか,自分以外に向けるのか,に着目したもので,自分に向けるのは「内的帰属」,自分以外に向けるのは「外的帰属」です。
国家試験を例にとると・・・
国家試験に合格できなかったのは,
「自分の努力不足だ」と考えるのは「内的帰属」です。
「ボーダーラインが上がったからだ」と考えるのは「外的帰属」です。
これだと内的帰属でも外的帰属でもそんなに違いはないかもしれません。
いじめられる原因を例にとると・・・
自分がいじめられるのは,
「自分にいじめられる理由があるからだ」と考えるのは「内的帰属」です。
「自分がいじめられるのは,いじめる人たちが悪い」と考えるのは「外的帰属」です。
冷静に考えられると,いじめる人たちが悪いに決まっています。人権を無視した行為だからです。
しかし,当事者は「自分にはいじめられる理由がある」ととらえて,どんどんその深みに入っていくことになりかねません。
そこに必要なのが,認知行動療法的かかわりです。人の認知はあっと言う間に変わります。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題8 試験に失敗したときに生じる原因帰属に関する次の記述のうち,内的帰属の例として適切なものを1つ選びなさい。
1 勉強不足に原因がある。
2 問題が難しかったことに原因がある。
3 電車が遅れ遅刻したことに原因がある。
4 運が悪かったことに原因がある。
5 教師の指導力不足に原因がある。
この問題は,内的帰属について問いていますが,出題の仕方によって,問題がとても簡単になってしまっています。
こういったところが,第30回国試らしいと言えるでしょう。
もしこの問題が,「内的帰属の例として適切なものを1つ選びなさい」と出題されていたら,難易度はとてつもなく高くなったことでしょう。
試験に失敗したときに生じる原因 ⇔ 内的
ということばから,内容が想像できてしまうのです。
正解は,選択肢1です。
1 勉強不足に原因がある。
内的,つまり自分の内部に向かっている内容は,「勉強不足」しかありません。
これ以外は,すべて外的帰属です。
ちょっと悩むのは,選択肢4でしょう。
4 運が悪かったことに原因がある。
しかし,「運」というのは,「試験に失敗した」という結果に対する原因ではありません。
内的帰属の場合は,原因を操作することで,結果を変えることが可能です。
「運が悪かった」という外在化を行うことは,メンタルヘルスのために必要なことですが,外的帰属なので,正解にはなりません。
<今日の一言>
2 問題が難しかったことに原因がある。
近年の社会福祉士の国家試験は,受験者の出来具合によって,合格基準点が大きく上下しています。
魔の第25回国試と呼んでいる第25回国試は,点数が下がった例です。合格基準点が72点となりました。
問題が難しくて多くの人が解けなければ,このように合格基準点が下がるので,年度間の不平等は生じません。
合格基準点は例年とほぼ変わらないのにもかかわらず,問題が難しくて試験に失敗したというのは,あり得ないことです。
勉強不足で問題が難しく感じたことに原因があると考えると,内的帰属となります。
このように考えることができれば,勉強法を変えることができます。国試に合格するためには,内的帰属のほうが良いみたいです。