今回は,脊髄小脳変性症を取り上げます。
脊髄小脳変性症は,難病法の指定難病に指定されています。
どのような症状を呈するのかについて,難病情報センターのホームページ https://www.nanbyou.or.jp/entry/4879 から引用します(一部改変)。
この病気ではどのような症状がおきますか 主な症状は、起立や歩行がふらつく、手がうまく使えない、喋る時に口や舌がもつれるなどの症状です。 脊髄小脳変性症では、これらの症状がたいへんゆっくりと進みます。このような、運動が上手に出来ないという症状を総称して運動失調症と言います。 脊髄小脳変性症として総称されている病気では、それぞれの種類で、運動失調以外にもさまざまな症状を伴います。 |
同ホームページによると,脊髄小脳変性症の発症要因には,遺伝性と非遺伝性のものがあり,約3分の1が遺伝性によるものだそうです。
脊髄小脳変性症の症状はさまざまありますが,主症状として「運動失調」がゆっくり進行するということは覚えておきたいです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題5 肢体不自由となる疾患に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは,呼吸困難が初発症状である。
2 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,運動失調を主体とする変性疾患である。
3 脊髄損傷では,排尿障害が起こりやすい。
4 分娩時の高酸素血症は,脳性麻痺の原因となる。
5 遺伝性の脊髄小脳変性症では,歩行障害は起こらない。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーという聞き慣れないものが含まれた問題ですが,そういったものに決してひるむことなく,前向きの気持ちで問題を読むようにしましょう。
それでは,解説です。
1 デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは,呼吸困難が初発症状である。
筋ジストロフィーは,中高年の男性が多く罹患するというイメージがあるかと思います。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは,遺伝子の異常(伴性劣性遺伝)によって多くは幼児期に発症するのが特徴です。
悲しいですが,多くの患者は20歳までには亡くなると言われています。
さて,初発症状です。デュシェンヌ型であっても,筋ジストロフィーなので,身体の筋力低下を来します。
呼吸に関連する筋力低下に伴い,呼吸困難も来すことがありますが,初発症状ではありません。
2 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,運動失調を主体とする変性疾患である。
運動失調とは,運動が上手に出来ないという症状です。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)も運動ができなくなりますが,運動失調ではなく,筋力低下によって生じるところが異なります。
3 脊髄損傷では,排尿障害が起こりやすい。
これが正解です。
脊髄を損傷することで排尿調節をすることが困難になり,多くの人が排尿障害を来たします。
4 分娩時の高酸素血症は,脳性麻痺の原因となる。
脳性麻痺の原因となるのは,分娩時の低酸素血症です。
5 遺伝性の脊髄小脳変性症では,歩行障害は起こらない。
髄小脳変性症は,遺伝性であっても非遺伝性であっても,歩行障害を含む運動失調を来たすのが特徴です。