現代の福祉国家は,マーシャルによれば
・資本主義
・民主主義
・福祉
が実践されている国家ということになります。
これを「ハイフン連結社会」といいます。
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/05/blog-post_21.html
歴史をひもとけば,資本主義の制度的欠陥により,労働者の貧困が生まれました。
その欠陥を補うのが現代の福祉国家です。
ベンサムという人は功利主義で知られますが,一人ひとりの幸福の和が多くなるとよいと考える「最大多数の最大幸福」を述べています。
功利主義では,結果がすべてです。
救済を求める100人のうち,1人を助けることができなくても,99人が救出できれば,「最大多数の最大幸福」となります。
1人を助けようとして,10名が救助に向かったものの最初の1人と救助に向かった10名が亡くなったとします。
国のリーダーは,時にはこのような非情な選択を迫られることもあります。
さて,今日のテーマは「正義について語ろう」です。
味方と敵があった場合,味方は正義です。敵は正義を脅かす存在です。
しかし,現実社会では,そんなに明確ではありません。
立場が変わると,正義は変わります。
功利主義は,否定されるものではありません。
それに異を唱えた人物がいます。
それが今日の問題です。
第30回・問題22 ロールズ(Rawls,J.)が論じた「正義」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 成員の快楽の総和を最大化する社会が,最も望ましいと論じた。
2 社会で最も不遇な人の最大の便益となるように,資源配分の是正が行われるべきであると論じた。
3 諸個人に対する平等な基本的自由の実現が不可能であることを前提に,正義を論じた。
4 「無知のヴェール」に包まれた個人を想定した議論では,功利主義的な社会が構想されることになると論じた。
5 「さまざまな生き方」を選べる基本的なケイパビリティを平等に配分することが,正義であると論じた。
ロールズが論じた「正義」は,「格差原理」として知られます。
正解は,選択肢2です。
2 社会で最も不遇な人の最大の便益となるように,資源配分の是正が行われるべきであると論じた。
ロールズはアメリカの哲学者です。
アメリカは,成功を目指して努力します。
当然そこには競争があります。
成功者は決して批判されるものではありません。
成功者にも正義があります。努力して成功をつかんだからです。
そこで,ロールズが考えたのは,格差原理です。
格差原理とは,
格差はあっても良いが,その格差は,最も不遇な人を恩恵があるように使われる場合に認められる
というものです。
累進課税となっている所得税は,ロールズの正義に合致します。
消費税は,合致しません。
それではほかの選択肢も見てみましょう。
1 成員の快楽の総和を最大化する社会が,最も望ましいと論じた。
これは,功利主義を表現する「最大多数の最大幸福」です。
ロールズの正義とは真逆です。
3 諸個人に対する平等な基本的自由の実現が不可能であることを前提に,正義を論じた。
基本的自由,そのうちのおそらく財産権のことを述べていると思いますが,ロールズの正義は決してそれを否定するものではありません。
4 「無知のヴェール」に包まれた個人を想定した議論では,功利主義的な社会が構想されることになると論じた。
無知のヴェールは,格差原理を実現するために重要なものです。
無知のヴェールをかぶると,自分の属性がわからなくなるからです。
そうすると,自分の属性に有利になるように考えることができません。
そのことによって,格差原理が実現すると考えました。
功利主義的な社会とは,結果が大事な社会です。
無知のヴェールをかぶると,結果を考えて行動することができなくなるのです。
5 「さまざまな生き方」を選べる基本的なケイパビリティを平等に配分することが,正義であると論じた。
ケイパビリティは,潜在能力と訳されます。
ケイパビリティを論じたのは,アマルティア・センです。