「人体の構造と機能及び疾病」は,なかなか手ごわい科目です。
勉強しないものが出題されるからです。
だからといって,決して解けないものではありません。なぜなら身近なものが多いので,勉強しなくても正解できる可能性があるからです。
前回取り上げた「健康」に関するものは大違いです。
https://fukufuku21.blogspot.com/2021/04/blog-post_3.html
それでは,今日の問題です。
第30回・問題4 高齢者に多くみられる病態に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 脱水になると,脈拍が少なくなる。
2 老人性難聴では,低音領域から聴力が低下する。
3 甲状腺機能低下症は,浮腫の原因となる。
4 栄養過多は,褥瘡の発生要因になる。
5 葉酸が不足すると,味覚障害が生じる。
国家試験が終わると,「今年の国試は今まで見た中で最も難しかった」という感想がSNSなどでみられます。
なぜそのような感想になると思いますか?
そのヒントは,参考書にあります。現時点(2021年4月)では,今年度版の参考書はまだ発刊されていません。
今年の国試問題を参考にしながら,制作過程にあることでしょう。
国試内容すべてが反映されるわけではありませんが,多くは加筆されるでしょう。
次の年の国試を受験する人は,そのように出来上がった参考書を使って勉強します。そのため過去問を見たとき,ある程度対応が可能です。
国試は,みんなが正解できては合格基準点が上がるので,ある程度の問題調整が必要です。
今日の問題は,そのような調整で出題されたものではないと思いますが,結果的にはそれと同じ効果をもたらしたと言えるでしょう。
なぜなら,ほかのものを確実に消去することで正解できる問題だからです。
こういったタイプの問題は,消去できない選択肢が1つでもあると正解することが困難です。
この問題の正解は,選択肢3です。
3 甲状腺機能低下症は,浮腫の原因となる。
よくよく考えてみれば,甲状腺ホルモンは,新陳代謝を促す作用があるので,それが低下するとむくみそうな感じがします。
しかし,それは今だから言えること,国試会場でそう考えるのはとても困難です。
だから難しい問題となります。
それでは,ほかの選択肢を消去していきましょう。
1 脱水になると,脈拍が少なくなる。
脱水になると,脈拍は多くなります。
脱水になると血液循環量が減少することで血圧が低下します。
それでも酸素を運ばなければならないために脈拍を多くして,それを補おうとするためです。
2 老人性難聴では,低音領域から聴力が低下する。
老人性難聴は,高音領域から聴力が低下することが特徴です。これはよく知られていることです。
この出題は,親切な出題です。
場合によっては,感音難聴は,低音領域から聴力が低下する,といったように出題されます。
感音難聴(感音性難聴)は,老人性難聴のことです。
4 栄養過多は,褥瘡の発生要因になる。
褥瘡は,圧迫によって血液循環が悪くなることで生じますが,栄養が不足することでも生じます。
特に注意が必要なのは,たんぱく不足による低アルブミン血症です。アルブミン不足は,褥瘡発生要因となるからです。
5 葉酸が不足すると,味覚障害が生じる。
葉酸を聞いたことがない人もいるかもしれません。しかし,それを知らなくても何とかなるのが国試です。
「葉酸は知らない」と思うと,迷いの森に入り込みますので,注意が必要です。
現在(2021年4月)での味覚障害と言えば,新型コロナの感染が疑われます。
しかし,味覚障害の要因として一般的に知られるのは亜鉛不足でしょう。そのために,しじみが良いとされます。
おばあちゃんの知恵は,根拠があるものです。