社会福祉士の国家試験では,最初の科目である「人体の構造と機能及び疾病」は,なかなかやっかいな科目です。
覚えることが多いからです。
しかし,専門科目の用語などと異なり,実社会で見聞きするものなので,勉強せずとも対応できる問題もあります。
今日はそんな問題を取り上げます。
第30回・問題2 人体の各器官に関する次の記述のうち,解剖学的に正常なものを1つ選びなさい。
1 頸椎は12個の骨で構成される。
2 頸動脈は体表から触知できる。
3 大腸は空腸と回腸に分けられる。
4 右肺は2つの肺葉からなる。
5 胃は横隔膜の上にある。
問題自体はかなり高度です。
しかし,正解は選択肢2です。
2 頸動脈は体表から触知できる。
変に勘繰ることなく,素直に考えると選べるはずです。
一般的に,脈をみるときは,手首にある橈骨動脈を使います。
しかし,末梢に近い動脈なので心臓の拍動が弱いと脈をみることができなくなることがあります。
その代わりに使われるのが頸動脈です。橈骨動脈よりずっと心臓に近く血管も太いためです。
ほかの選択肢も確認します。
1 頸椎は12個の骨で構成される。
このような出題があると焦ることでしょう。
頸椎の数なんて勉強してしなかった,と思うと混乱の元です。
頸椎は7つですが,このように数字が含まれるものは,気をつけたほうが良いです。
脊椎の覚え方です。
脊椎は上から頸椎7個,胸椎12個,腰椎5個となりますが,食事の時間をイメージすると良いように思います。
朝7時,昼12時,夕5時。
夕食がちょっと早い5時というのは,かつての施設の夕食と思うと良いかもしれません。
3 大腸は空腸と回腸に分けられる。
大腸は,盲腸,結腸,直腸に分けられます。
空腸と回腸に分けられるのは小腸です。
4 右肺は2つの肺葉からなる。
今日の問題の中で,過去に出題実績のあるものです。
そのため,参考書などにも記載があったはずです。
左肺は,2つ
右肺は,3つ
左右に差があるので覚えにくいものの一つだと言えます。だからこそ出題されます。
覚え方は,
左には心臓があるので,左肺の肺容量が小さい。
これで左右差は忘れないでしょう。
5 胃は横隔膜の上にある。
胃は横隔膜の下にあります。
胃の位置よりも,この問題で重要なことは,横隔膜の働きです。
肺の動きに関係しているからです。肺は自ら拡張・収縮しているわけではありません。
これが押さえられていれば,胃が横隔膜の上にはないだろうと考えることができそうです。
<今日の一言>
国試に不合格になると,「応用力がなかった」と思う人がいます。
今日の問題の選択肢5のように,確かに応用力が求められるものもあるでしょう。
しかし,不合格になるのは,応用力がなかったことではなく,理解が不足していたからです。そのように考えるとシンプルです。
「応用力がなかった」というのは,あまりにあいまいです。どうしたらよいのか次の手が見えて来ません。
応用力がなかったと本気で思っているとしたら,それは覚え方が間違っています。
丸暗記勉強の弊害です。
参考書に書いているあることを丸暗記することは,非効率であるとともに,文章をちょっと変えられただけでも対応が難しくなります。