国家試験の出題順で言うと,「①人体の構造と機能及び疾病」~「⑪権利擁護と成年後見制度」は,共通科目と呼ばれています。
このように呼ばれる理由は,これらの科目は精神保健福祉士の国家試験と共通の科目だからです。
今回は,統合失調症を取り上げますが,精神疾患はかなりの高率で出題されます。
その理由は,精神保健福祉士も学ぶからでしょう。
特に押さえておきたい精神疾患は
・統合失調症
・うつ病
・双極性障害
の3つです。そのほかの疾患が出題されることもありますが,この3つを押さえておけば,合格に必要な最低ラインの知識となります。
精神疾患の診断基準には,WHO(世界保健機関)によるICDとアメリカ精神医学会によるDSMがありますが,この科目で出題されるのは,DSMです。
精神保健福祉士の専門科目である「精神疾患とその治療」では,ICDも出題されます。
わが国の診療報酬はICDに基づいているので,精神保健福祉士は,より現場で使われるICDを勉強するのでしょう。
精神疾患の押さえ方
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/03/31_23.html
話は戻って,統合失調症です。
現時点の最新版であるDSM-5による診断基準は,以下の通りです。
・妄想 ・幻覚 ・まとまりのない発語 ・ひどくまとまらない,または緊張病性の行動 ・陰性症状(感情の平板化,意欲欠如など) |
これらの2つかそれ以上が存在して,6か月を超えて続く場合に統合失調症だと診断されます。
今日は,リンクを貼った過去記事https://fukufuku21.blogspot.com/2018/03/31_23.htmlにも紹介している問題を改めて紹介したいと思います。
第30回・問題6 精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において,「統合失調症」と診断するための5つの症状に含まれているものはどれか。正しいものを1つ選びなさい。
1 まとまりのない発語
2 観念奔逸
3 強迫行為
4 抑うつ気分
5 不眠または過眠
勉強が足りない人にとっては,かなり辛い問題でしょう。
正解は,選択肢1です。
1 まとまりのない発語
は,5つの症状の1つです。
それではほかの選択肢も確認します。
2 観念奔逸
観念奔逸は,「かんねんほんいつ」と読み,次から次へと考えが浮かんでくる症状です。
双極性障害の躁病エピソードなどでみられる症状です。
3 強迫行為
強迫行為とは,自分ではムダだと変わっていてもやめることができない行為をいいます。
具体的には,手を洗い続ける,カギを閉め忘れていないか何度も何度も繰り返すなどの行為です。
強迫行為は,強迫性障害でみられる症状です。
4 抑うつ気分
抑うつ気分は,気分が落ち込む症状です。
うつ病や双極性障害のうつ病エピソードなどでみられます。
5 不眠または過眠
不眠または過眠もうつ病や双極性障害のうつ病エピソードなどでみられます。
<今日の一言>
今日の問題には,元ネタがあります。
第27回・問題6 精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-5に基づく統合失調症の診断に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 妄想や幻覚は,陰性症状である。
2 まとまりのない会話あるいは発語は,症状の一つである。
3 症状は,発症から2週間で消失する。
4 仕事,対人関係,自己管理などの面での機能が低下することはない。
5 原因として,乱用薬物の摂取がある。
珍しく過去3年の出題の中に元ネタがありますが,こういった問題はめったにありません。
3年間の過去問をどれだけ完璧に解けてもそれだけの知識だけで合格できないのは,こういったところに理由があります。
それにもかかわらず,3年間の過去問で合格できると思っている人がどれだけいることでしょうか。
ご愁傷様と言いたいです。