今回から,第30回の問題を取り上げていきますが,この第30回国試は,いわくつきの回となりました。
いわくつきとは,合格基準点がこの時点で過去最高の99点となったことです。
だからと言って,合格が難しい試験だったのかと言えば,決してそんなことはありません。
合格率は例年並みだったからです。
第30回国試のおかげで,国家試験を実施する「社会福祉振興・試験センター」にとって良いデータが入手できたのです。
どんな問題を出題すれば得点できないのか,得点できるのかの見極めができるようになりました。
どんな問題を出題すれば得点できないのか,は言うまでもなく,第25回国試です。
その逆に,得点できるのかは,第30回国試です。
それでは早速今日の問題です。
第30回・問題1 標準的な身体の成長と発達に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生後2か月までに,首がすわる。
2 生後3か月までに,座位保持ができる。
3 生後6か月までに,乳歯が生えそろう。
4 生後6か月までに,大泉門は閉鎖する。
5 生後18か月までに,一人で歩くことができる。
こんな問題が出題されて,しかも合格基準点が99点だと聞いて,絶望的に思う人もいることでしょう。
また,子育て経験がない人も不利だと思うかもしれません。
しかし,たとえ子育て経験があっても正解するのは,簡単なものではありません。
日記でもつけていれば,後から振り返るとわかるかもしれません。子育て中は目の前のことで精いっぱいなので,言われてみると確かにそうだと思ったとしても,それがいつのことだったのかを覚えているのは難しいように思います。
子育て経験のない人は不利だと思うのは,子育て経験がないからそう思うだけで,子育て経験がたとえあったとしても,このように決して有利だと言えるものではありません。
大切なことは,決して焦らず,冷静に判断することを心掛けることです。
近年の問題1は比較的解きやすい問題が出題されてきていますが,この問題のように難しめの問題が出題されると,問題2以降に大きな影響を及ぼしかねません。
難しい問題はほかの受験生にとっても難しいものです。
そんな問題に右往左往することなく,気持ちを切り替えて次の問題に進むことが重要です。
さて,この問題の正解は,選択肢5です。
5 生後18か月までに,一人で歩くことができる。
言われてみると,「そうだな」と思う人も多いことでしょう。
この問題の難易度が高いのは,勉強したことがないものが出題されているからです。
今はおそらくどの参考書にも書かれていると思いますが,この時点では書かれていなかったはずです。
しかし,ほかの選択肢にとらわれず,冷静に考えてみると,正解できる可能性はあります。
それでは,一応ほかの選択肢も見てみます。
1 生後2か月までに,首がすわる。
首がすわるのは,もう少し後の3か月くらいからです。
2 生後3か月までに,座位保持ができる。
座位が保持できるようになるのは,もっと先の6か月を超えてからです。
3 生後6か月までに,乳歯が生えそろう。
この選択肢は消去できる可能性があるかもしれません。
6か月で乳歯が生えそろった乳児がいたらびっくりです。この時期くらいから生え始めます。
4 生後6か月までに,大泉門は閉鎖する。
頭蓋骨は大きいので,そのままだと産道を通り抜けることができません。
そのために,新生児の頭蓋骨はつながっておらず,それぞれが重なり直径が小さくなることによって,産道を通り抜けることができます。
生まれると重なりが戻りますが,すき間が生じます。大きいすき間が大泉門,小さいすき間が小泉門です。
小泉門は3か月ころまでに閉じて,大泉門は1歳6か月ころまでに閉じます。
<今日の一言>
今日の問題の正解は,「生後18か月までに,一人で歩くことができる」です。
これ単体でみた場合は,それほど難しくないかもしれません。
しかし,今日の問題でわかるように,ほかの選択肢がどのように出題されるかによって,簡単に正解することができなくなります。
これが国家試験の難しさです。
国家試験問題をばらして,一問一答にした問題集も販売されています。
一問一答式もそれなりに意味がありますが,ほかの選択肢との相互作用に慣れることができないことを知っておくことが大切です。
今日の問題のような問題は,第30回には少なく,しっかり勉強した人は解きやすい問題が多かったのが特徴です。しかし,それぞれの問題をみると決して簡単ではありません。
今日から,第30回国試問題を取り上げていきますが,問題の目のつけどころなども学んでいってください。知識だけで合格基準点を超えることは簡単なことではないのです。
ほかの受験生と一歩も二歩も差をつけることができるとっておきの方法を学んでいきましょう。