国家試験に合格するためには,応用力が必要だと言う人がいます。
応用力って何なのでしょう?
今日の問題を見ながら考えていきましょう。
第30回・問題21 「平成28年における少年非行,児童虐待及び児童の性的搾取等の状況について」(警察庁)に示された児童虐待に関する検挙状況についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 検挙件数は,身体的虐待よりも心理的虐待の方が多い。
2 被害児童数は,平成24年以降の5年間で変化はない。
3 加害者数は,養親・継親よりも実親の方が多い。
4 加害者数は,男性と女性で差がない。
5 被害児童数は,男児は女児の1.5倍である。
こういった出題があると,白書や報告書に目を通しておくべきだったと思うかもしれません。
しかし,もし目を通していても覚えるのは大変なことです。
さて,この問題は検挙件数です。
児童相談所への通告ではありません。実際に警察が動いて,検挙した件数です。
うっかり間違いそうなのは,選択肢1です。
1 検挙件数は,身体的虐待よりも心理的虐待の方が多い。
児童相談所が取り扱ったものの中で最も多いのは,心理的虐待です。
これはしっかり勉強してきた人なら知っているはずです。
ここで,警察が検挙するのはどういった時なのだろう,という思考を働かせなければなりません。そうしないと間違います。
これが応用力なのかもしれません。
心理的虐待で検挙するのはハードルが高いと言えます。
証拠がないからです。
それと比べると身体的虐待は,虐待ではなく暴行だと言えるでしょう。
暴行なら検挙できそうです。
正解は,選択肢3です。
3 加害者数は,養親・継親よりも実親の方が多い。
これは勉強した人でなければ,選べないように思います。
一般イメージでは,養親・継親による虐待が多いように思うでしょう。
報道は,話題性のあるものしか取り上げません。そのために「虐待するのは,内縁の夫」というイメージがつきます。
しかし,実際に多いのは,実母による虐待です。
<今日の一言>
多くの問題を見ていると,試験委員は思考の道筋を作って,答えにたどりつくようにしているように感じます。
今日の問題では,心理的虐待で警察が動くのはどんな場合なのだろうと考えさせるところがその道筋です。
国家試験問題は,多くの人が思っているほど意地悪であったり,重箱の隅をつつくようなものであったりはしていません。
国家試験に合格するために応用力が必要だとすれば,多くの知識を駆使して考えるということでしょう。
これができないと点数は伸びません。