2021年4月11日日曜日

社会心理学について

「心理学理論と心理的支援」を苦手にしている受験生が多いようです。

 

心理学とひとまとめにされますが,「認知心理学」「発達心理学」「社会心理学」「学習心理学」「人格心理学」など多くの領域があります。

 

このことによって,雲をつかむような気がするのかもしれません。

 

しかし,社会福祉士・精神保健福祉士に出題されるのは,それらのほんの入り口のものだけです。

 

本格的な知識は必要とされないので,用語を簡単に覚えるだけで何とかなります。

 

実は国試に合格するためには,極めて重要なことです。多くの受験生が苦手としている科目なので,人よりちょっと多く勉強すると差がつきやすいのです。

 

領域が広いということは,3年間の国家試験の中には,出題されて来ないものがあることを意味しています。

 

そのため3年間の過去問を完璧に覚えてもそれだけではほとんど得点することはできないでしょう。

 

さて,今回取り上げるのは,社会心理学です。

 

現代の心理学は,さまざまな研究によって,入ってきた情報をどのように脳が処理するのかが解明されてきています。

 

そのうちの社会心理学は,集団の中での人の認知や行動を研究した領域です。

 

もちろん個人差があるので,50%の人に当てはまるものが理論化されます。

 

知っていても知らなくても社会生活は送れますが,知っておくことで,様々な対策ができます。

 

この差は大きいと思いませんか?

 

それでは今日の問題です。

 

30回・問題11 集団における行動に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会的ジレンマとは,集団的な討議を行うことによって,より安全志向な結論が得られやすくなることをいう。

2 ピグマリオン効果とは,集団において多数派の意見や期待に合わせて,個人の意見や行動が変化することをいう。

3 傍観者効果とは,緊急的な援助を必要とする場面であっても,周囲に多くの人がいることによって,援助行動が抑制されることをいう。

4 同調とは,他者の存在によって作業の効率が向上することをいう。

5 コーシャス・シフトとは,集団のメンバーの多くが個人的利益を追求した行動をとることで,集団全体にとって不利益な結果となることをいう。

 

実に第30回国試らしい問題です。

 

コーシャス・シフトという聞き慣れないものが出題されていますが,頻出のもので構成された問題でありしかも入れ替えになっているので,きっちり勉強した人にとってはかなり易しめの問題となっています。

 

それでは,解説です。

 

1 社会的ジレンマとは,集団的な討議を行うことによって,より安全志向な結論が得られやすくなることをいう。

 

〈社会的ジレンマ〉

集団のメンバーの多くが個人的利益を追求した行動をとることで,集団全体にとって不利益な結果となること。

 

2 ピグマリオン効果とは,集団において多数派の意見や期待に合わせて,個人の意見や行動が変化することをいう。

 

〈ピグマリオン効果〉

自分が相手に対してある期待を持つと,自分自身が意識しないうちに当該期待に沿った行動を,自らがとってしまうという行動傾向のこと。一般的には,教師が生徒に対して成績向上の期待をもつことによって,実際にその生徒の成績が向上していく現象として知られる。

 

3 傍観者効果とは,緊急的な援助を必要とする場面であっても,周囲に多くの人がいることによって,援助行動が抑制されることをいう。

 

これが正解です。

 

〈傍観者効果〉

緊急的な援助を必要とする場面であっても,周囲に多くの人がいることによって,援助行動が抑制されること。

 

4 同調とは,他者の存在によって作業の効率が向上することをいう。

 

〈同調〉

集団において多数派の意見や期待に合わせて,個人の意見や行動が変化すること。

 

〈社会的促進〉

他者の存在によって作業の効率が向上すること。

 

5 コーシャス・シフトとは,集団のメンバーの多くが個人的利益を追求した行動をとることで,集団全体にとって不利益な結果となることをいう。

 

〈コーシャス・シフト〉

集団的な討議を行うことによって,より安全志向な結論が得られやすくなること。逆に危険な結論に導き出しやすことは,リスキー・シフトという。

 

これらを整理すると以下のようになります。


社会的ジレンマ

集団のメンバーの多くが個人的利益を追求した行動をとることで,集団全体にとって不利益な結果となること。

ピグマリオン効果

自分が相手に対してある期待を持つと,自分自身が意識しないうちに当該期待に沿った行動を,自らがとってしまうという行動傾向のこと。一般的には,教師が生徒に対して成績向上の期待をもつことによって,実際にその生徒の成績が向上していく現象として知られる。

傍観者効果

緊急的な援助を必要とする場面であっても,周囲に多くの人がいることによって,援助行動が抑制されること。

同調

集団において多数派の意見や期待に合わせて,個人の意見や行動が変化すること。

社会的促進

他者の存在によって作業の効率が向上すること。

集団思考

集団的な討議を行うことによって,一人で出す結論よりも極端な結論を導きだしやすい。

より安全志向な結論が得られやすくなることは,「コーシャス・シフト」という。

より危険な結論が得られやすくなることは,「リスキー・シフト」という。


立派な資料が出来上がりました。


〈傍観者効果について〉


社会福祉士・保健福祉士の国家試験では出題されませんが,人を助けるという心理プロセスとして,以下のようなものがあるとされます。


1 何か深刻な事態が生じているという認識 

  ↓  ↓

2 事態が危機的状況であるという認識

  ↓  ↓

3 自分に助ける責任があるという認識

  ↓  ↓

4 どうやって助ければよいかを自分は知っているという認識

  ↓  ↓

5 援助しようという決断


傍観者効果が起きるのは,周囲に目撃者が多いと,「3 自分に助ける責任があるという認識」が起きにくいためです。そのために4,5に進みません。


傍観者効果というものがあることを知っていれば,ほかの誰かが助けてくれるだろうと思わないので,援助行動を取りやすくなります。

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