「健康の社会的決定要因」という言葉を知っていますか?
健康でいることは,社会の状態に大きな影響を受けます。
経済格差と同じように健康格差もあります。
健康は自己管理の側面もありますが,社会環境に大きな影響を受けています。
1978年,当時のソビエト連邦のアルマ・アタという都市で,WHO(世界保健機関)によって「プライマリヘルスケアに関する国際会議」が開催されました。
「すべての人々に健康を」を達成するものが「プライマリヘルスケア」という考え方です。
この会議の最終日にプライマリヘルスケアの活動を打ち出したアルマ・アタ宣言が採択されました。
具体的な活動内容として,
・健康教育
・安全な水の供給とその基本的環境
・栄養の供給と栄養状態の改善
・感染症防止
などが掲げられました。
もともとは「2000年までにすべての人々に健康を」を目標にしていましたが,40年以上経った今でもそのまま活きる内容です。
健康を「基本的人権」であるととらえていることが特徴です。
1986年には,カナダのオタワ市でWHOの「第1回ヘルスプロモーション世界会議」が開催されました。
この会議の成果として「オタワ憲章」が制定されています。
ヘルスプロモーションは,「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし,改善することができるようにするプロセス」と定義されます。
この定義は,国家試験では出題されたことがありませんが,2005のバンコク憲章で採択されたものです。
そのため,バンコク憲章は覚える必要はないでしょう。
覚えるべきなのは,今日のテーマであるアルマ・アタ宣言とオタワ憲章です。
それぞれの内容が詳しく問われたことがないので,覚えるべきポイントは
アルマ・アタ宣言 → プライマリヘルスケア
オタワ憲章 → ヘルスプロモーション
これでとりあえず十分でしょう。
第30回・問題3 世界保健機関(WHO)の活動に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 アルマ・アタ宣言では,プライマリヘルスケアの重要性が示された。
2 リハビリテーションという言葉を初めて用いた。
3 憲章前文の中で,健康とは,身体的,精神的,社会的,政治的に良好な状態であると定義した。
4 国際疾病分類であるICIDHを策定した。
5 健康寿命とは,健康上の問題で制限されることなく仕事ができる期間と定義した。
勉強不足の人が正解するのはなかなか難しい問題でしょう。
正解は,選択肢1です。
1 アルマ・アタ宣言では,プライマリヘルスケアの重要性が示された。
アルマ・アタ宣言といえば,プライマリヘルスケアです。
内容については問われていないことに注目です。
勉強をしっかりした人には,迷うことなく正解できる問題でしょう。
もし,迷うことがあったら,勉強方法を見直すことが必要です。
それではほかの選択肢も確認します。
2 リハビリテーションという言葉を初めて用いた。
リハビリテーションという言葉は,結構古いです。
一般化したのは第1次世界大戦後のことです。
第1次世界大戦は,戦闘が長期にわたったことから傷ついた人が多く,その人たちの社会復帰のためにリハビリテーションが行われました。
3 憲章前文の中で,健康とは,身体的,精神的,社会的,政治的に良好な状態であると定義した。
健康の定義は,「身体的,精神的,社会的に完全に良好の状態」です。
4 国際疾病分類であるICIDHを策定した。
国際疾病分類は,ICDです。
ICIDHは,国際障害分類です。
うっかりしたら,間違いそうです。
5 健康寿命とは,健康上の問題で制限されることなく仕事ができる期間と定義した。
健康寿命とは,病気や障害のために日常生活に制限を受けない期間のことをいいます。
仕事ができる期間ではありません。