市町村は,直接的な住民サービスに関する事務を行います。
都道府県は,事業所指定や認可・認定などの基盤整備,専門職の確保や研修,専門性の高い事務など,規模や性質において,市町村が行うには向かない事務を行います。
これらは,設置する機関にも同じことが言えます。
都道府県が設置しなければならない機関(主なもの)
・身体障害者更生相談所 ・知的障害者更生相談所 ・精神保健福祉センター ・介護保険審査会 ・福祉事務所 ・児童相談所 ・婦人相談所 ・保健所 etc・・・ |
都道府県が設置する機関・施設は,専門性の高い判断が求められる事務を行っています。
もう慣れて来ましたか?
それでは,今日の問題です。
第33回・問題44 次のうち,都道府県が設置しなければならないと法律に規定されている行政機関として,正しいものを1つ選びなさい。
1 発達障害者支援センター
2 基幹相談支援センター
3 地域包括支援センター
4 精神保健福祉センター
5 母子健康包括支援センター
前回取り上げた問題と極めてよく似た内容です。
前回の問題
引っ掛けポイントは,前回の問題とまったく同じである「1 発達障害者支援センター」です。
発達障害者支援センターは,都道府県が設置するものですが,義務ではなく,任意なのです。
〈発達障害者支援センターの業務〉
・発達障害の早期発見、早期の発達支援等に資するよう、発達障害者及びその家族その他の関係者に対し、専門的に、その相談に応じ、又は情報の提供若しくは助言を行う。 ・発達障害者に対し、専門的な発達支援及び就労の支援を行う。 ・医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し発達障害についての情報の提供及び研修を行う。 ・発達障害に関して、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を行う。 |
「専門的」という文言が含まれているのが,いかにも都道府県が設置する施設らしいところです。市町村は,基本的な住民サービスを行い,専門的なものは都道府県が行います。
身体障害者更生相談所・知的障害者更生相談所・精神保健福祉センターは設置義務があるのに対し,発達障害者支援センターは任意で設置するという規定になっています。
この違いの理由にはいろいろあると思いますが,その1つとしては,身体障害者更生相談所・知的障害者更生相談所・精神保健福祉センターは,それぞれ障害等級を定める業務のためです。
発達障害者の場合はこういった業務がないので,必ずしも設置されなくても業務が滞ることはありません。あればより良いという位置づけです。
さて,改めての解説です。
1 発達障害者支援センター
➡ 都道府県は設置することができる(任意)。※法律上の規定は,都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福祉法人その他の政令で定める法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(以下「発達障害者支援センター」という。)に行わせ、又は自ら行うことができる。
2 基幹相談支援センター
➡ 市町村は設置することができる(任意)。
3 地域包括支援センター
➡ 市町村は設置することができる(任意)。
4 精神保健福祉センター
➡ 都道府県(及び)指定都市は設置しなければならない(義務)。
5 母子健康包括支援センター
➡ 市町村は,設置するよう努めなければならない(努力義務)。
ということで,正解は「4 精神保健福祉センター」です。
市町村が設置する基幹相談支援センター,地域包括支援センター,母子健康包括支援センターは,直接的な住民サービスを行う機関・施設です。
こういった直接的な住民サービスの実施は,市町村の役割です。