2023年1月4日水曜日

福祉サービス第三者評価事業

福祉サービス第三者評価事業は,社会福祉法の規定を根拠として実施されています。

 

(福祉サービスの質の向上のための措置等)

第七十八条 社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。

 

ただし,この規定は,「自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずること」となっていて,質の評価に限らずとも,ほかに変わるものがあればそれはそれで大丈夫です。

 

さらには,義務ではなく,努力義務であることにも注意が必要です。

 

それでは,今日の問題です。

 

26回・問題41 地域における福祉サービス等の評価に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉法によると,社会福祉事業の経営者は,自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うこととされている。

2 福祉サービス第三者評価事業を行う評価者は,国が設立する第三者評価機関の認証が必要である。

3 介護保険事業においても,社会福祉法で規定される福祉サービスの第三者評価を受けることが義務づけられている。

4 保育所の福祉サービス第三者評価結果の公表は,義務化されている。

5 福祉サービス第三者評価では,法人の理念は評価対象とされていない。

 

福祉サービス第三者評価の詳細を知らずとも,正解はわかるでしょう。

 

まず正解は,選択肢1です。

1 社会福祉法によると,社会福祉事業の経営者は,自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うこととされている。

 

これが正解だとすぐに思えない人もいると思いますが,それは法の条文の半分が省略されているためです。


第七十八条 社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。

 

かなりイメージが異なるのではないでしょうか。全文があるのとないのでは受ける印象が違います。あいまいに覚えていると正しい文章に見えないなのではないかと思います。

国試問題の大部分を占める法制度は確実に覚えないと無残な結果になりかねません。

 

実は,この問題の元ネタがあります。

 

23回・問題118 適切なサービス提供体制の確保に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 社会福祉法人が経営する社会福祉施設における運営費(措置費)の弾力運用が認められるための条件の一つとして,福祉サービスの第三者評価を受審していることが必要であるが,その場合,受審の結果については公表する必要はない。

2 社会福祉法第78条第1項によれば,社会福祉事業の従事者は,自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うこと,とされている。

3 社会福祉法第78条第2項によれば,社会福祉事業者の団体は,福祉サービスの質の公正かつ適切な評価の実施に資するための措置を講ずるよう努めなければならない,とされている。

4 社会福祉事業については情報提供を積極的に行う観点から広告は原則自由であるが,誇大広告については社会福祉法により禁止されている。

5 社会福祉法第82条によれば,社会福祉事業の経営者は,その提供する福祉サービスの利用者等からの苦情があった場合,まず,都道府県の運営適正化委員会に届けなければならない,とされている。

 

この問題の選択肢2

2 社会福祉法第78条第1項によれば,社会福祉事業の従事者は,自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うこと,とされている。

 

の「社会福祉事業の従事者」の部分を入れ替えれば,第26回国家試験の正解になります。

 

これでわかるように,過去問を解くときには,「正解して満足」という勉強法をしても意味がありません。

 

誤りの選択肢の中に,今後受験する時に出題されるものがつまっているものです。

 

これを覚えなければ,過去問を解く勉強の意味はないと言えます。

 

過去問を解く勉強では,どうしても正解の選択肢に意識が向いてしまい,それ以外の選択肢に出題されているものの印象が薄くなりがちなので注意が必要です。

 

因みに第23回の問題の正解は選択肢4です。

4 社会福祉事業については情報提供を積極的に行う観点から広告は原則自由であるが,誇大広告については社会福祉法により禁止されている。

 

この規定は,実は第78条の次の第79条にあります。しかし,この規定を知らずとも冷静にほかの選択肢を消去できるので,正解できるはずです。

 

それでは,改めて,第26回の問題の解説です。

 

2 福祉サービス第三者評価事業を行う評価者は,国が設立する第三者評価機関の認証が必要である。

 

第三者評価機関は,都道府県推進組織の認証を受ける必要があります。

 

3 介護保険事業においても,社会福祉法で規定される福祉サービスの第三者評価を受けることが義務づけられている。

 

介護保険制度の中で,第三者評価の受審が義務づけられているのは,認知症グループホームのみです。

 

4 保育所の福祉サービス第三者評価結果の公表は,義務化されている。

 

児童福祉施設の中で,第三者評価の受審と公表が義務づけられているのは,社会的養護関係施設(児童養護施設,乳児院,児童心理治療施設,児童自立支援施設,母子生活支援施設)です。

 

保育所の受審と公表は努力義務です。

 

5 福祉サービス第三者評価では,法人の理念は評価対象とされていない。

 

法人の理念も評価対象です。

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