2023年1月15日日曜日

社会保険の保険者

日本の社会保険制度は5つありますが,そのうち,都道府県が保険者なのは国民健康保険しかありません。


国民健康保険は,近年の改正によって市町村とともに都道府県が保険者となりました。


つまり,それまでは都道府県が保険者である社会保険制度はなかったことになります。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題43 地方公共団体が関わる社会保険等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 後期高齢者医療は都道府県が保険者となる。

2 後期高齢者医療の給付に要する費用の3分の2は,保険料で賄われている。

3 国民健康保険と健康保険との間では,財政調整は行われない。

4 介護保険では市町村で組織する広域連合が保険者となることができる。

5 介護保険の財源として,国は各保険者に対し介護給付及び予防給付に要する費用の25%を一律に負担する。


問題づくりが下手なので,知識がなくても消去できそうな選択肢が含まれています。


今後は,おそらくそういったものは見られなくなるので,知識不足の人にとっては手ごわくなります。


高度な問題づくりが行われるためです。出題内容がスタンダードなものになればなるほど,受験者に差が生まれるでしょう。


それでは,解説です。


1 後期高齢者医療は都道府県が保険者となる。


後期高齢者医療制度は,法には保険者という表現がないのです。

不思議です。


法では,以下のように規定されています。


(広域連合の設立)

第四十八条 市町村は、後期高齢者医療の事務(保険料の徴収の事務及び被保険者の便益の増進に寄与するものとして政令で定める事務を除く。)を処理するため、都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する広域連合(以下「後期高齢者医療広域連合」という。)を設けるものとする。


つまり,都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する広域連合が保険者的な事務を行います。覚えるのは「後期高齢者医療制度の保険者は,都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する広域連合」で良いと思います。


2 後期高齢者医療の給付に要する費用の3分の2は,保険料で賄われている。


後期高齢者医療制度の費用の内訳は

保険料 1割

後期高齢者支援金 4割

公費 5割


後期高齢者医療制度の特徴は,現役世代の医療保険制度からの支援金があることです。


3 国民健康保険と健康保険との間では,財政調整は行われない。


国民健康保険と健康保険との間で財政調整を行っているのが,後期高齢者支援金です。



4 介護保険では市町村で組織する広域連合が保険者となることができる。


これが正解です。


介護保険の保険者は,市区町村ですが,規模の小さな町村が保険者となるのは大変なため,広域連合を組織することが認められています。


5 介護保険の財源として,国は各保険者に対し介護給付及び予防給付に要する費用の25%を一律に負担する。


これが問題づくりが下手なものです。「一律に」は多くの場合「一律ではない」ものです。


市町村の財政状況によって,5%分を振り分けて負担します。


財政状況が良い市町村の場合は,調整交付金が一切ないこともあります。

良くない市町村の場合は,調整交付金が上乗せされます。

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