今回は,市町村と都道府県の役割を学んでいきたいと思います。
市町村は,直接的な住民サービスに関する事務を行います。
介護保険サービスや障害福祉サービスなどの実施主体は市町村であることからもイメージできるでしょう。
都道府県は,事業所指定や認可・認定などの基盤整備,専門職の確保や研修,専門性の高い事務など,規模や性質において,市町村が行うには向かない事務を行います。
社会福祉法人や医療法人の認可,介護支援専門員試験や研修,身体障害等級の判定などを行うのが都道府県であることからもイメージできるでしょう。
すべてがこのルールに従えば良いのですが,地方分権の関係から,本来は市町村が行うものではないものも現在は,市町村が行っているものもあります。
例えば,介護保険法の要介護認定や障害者総合支援法の障害支援区分認定です。
これらは,市町村が行うには専門的すぎるので,市町村をバックアップするため,専門的な知識をもつ委員で構成される介護認定審査会や市町村審査会が設置されます。それぞれの審査会の二次判定の結果から市町村が認定する仕組みを取ります。
都道府県は,外部の専門職の力を借りなくても自前で行うことができる仕組みがあります。
身体障害者更生相談所,知的障害者更生相談所,精神保健福祉センターは,都道府県に設置義務がありますが,これらは,それぞれの障害等級の判定を行うために必要なのです。
また,事業所指定は,本来は都道府県の役割ですが,市町村が行うものもあります。
〈介護保険法〉
・地域密着型サービス事業者
・介護予防サービス事業者
・居宅介護支援事業者
〈障害者総合支援法〉
・特定相談支援事業者
〈児童福祉法〉
・障害児相談支援事業者
これらは例外中の例外です。社会福祉士の国家試験で出題される範囲のもので思いつくものは,これらしかありません。
また,指定や認定は都道府県の役割ですが,国が行う例外もあります。以下はその例です。
〈医療法〉
・特定機能病院
〈更生保護事業法〉
・更生保護法人(法務大臣)
〈更生保護法〉
・指定入院機関(厚生労働大臣)
また,覚えにくいのは児童福祉法です。
通所系の事務 → 市町村
入所系の事務 → 都道府県
都道府県が入所系を行う理由は,専門性の高い事務だからです。そのため,将来的にも市町村に権限移譲されないと思います。
ラストは,障害者総合支援法の自立支援医療です。
育成医療・更生医療 → 市町村
精神通院医療 → 都道府県
精神通院医療のみが都道府県の役割であることに注意が必要です。ただし,申請窓口は精神通院医療も市町村です。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題43 福祉行政における市町村の役割に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護支援専門員実務研修受講試験及び介護支援専門員実務研修を行う。
2 社会福祉法人の設立当初において,理事の選出を行う。
3 特別養護老人ホームの設備及び運営について,条例で基準を定める。
4 訓練等給付費の不正請求を行った指定障害福祉サービス事業者について,指定の取消しを行う。
5 小学校就学前の子どものための教育・保育給付の認定を行う。
選択肢1・3・4は,都道府県の役割です。
選択肢1の専門職の確保や専門職に対する研修を実施するのは,都道府県の役割の典型例です。
選択肢4の指定の取消しは要注意です。
指定を取消すことができるのは,指定した者です。指定障害福祉サービス事業者は,都道府県が指定するので,取消すことができるのは都道府県です。
指定特定相談支援事業者や指定地域密着型サービス事業者など市町村が指定するものは,市町村が取消すことになります。
単純に「指定を取消すのは都道府県だ」と覚えているとミスするので注意が必要です。
正解は,選択肢5です。
5 小学校就学前の子どものための教育・保育給付の認定を行う。
小学校就学前の子どものための教育・保育給付は,子ども・子育て支援法が規定するものです。
児童福祉法と異なり,子ども・子育て支援制度の中には,入所系がありません。
そのため,子ども・子育て支援制度の実施主体は市町村となっています。
しかし,市町村では判断できないものもあります。そういった場合は,都道府県が援助します。