2023年1月27日金曜日

福祉計画と事業の財源

介護保険法に規定される介護保険事業計画は,3年を1期として定めます。


3年を1期として定めるのは,介護保険事業計画と障害福祉計画(及び障害児福祉計画)の2つ(あるいは3つ)しかありません。


介護保険事業計画は,第1期と第2期は,5年を1期として3年ごとに定める,という今考えるとおかしな計画でした。


このようにおかしなことになったのは,介護保険法が始まった2000年当時は,5年を1期とするか,策定期間がないものが一般的だったからでしょう。


このおかしなものにとうとう気がついたのか,第3期から現在と同じ3年を1期になりました。


さて,なぜ介護保険事業計画は,ほかのものとは異なって3年を1期として策定する必要があるのだと思いますか?


それが今日のテーマです。


市町村介護保険事業計画で定めた介護保険サービスの見込み量に基づいて第1号被保険者の介護保険料を決定します。


そのために,5年を1期では長すぎるのです。


介護保険事業計画以外に,計画の内容によって利用者の利用額が決まる制度はありません。


それでは,なぜ障害福祉計画は,3年を1期としているのでしょうか。


障害福祉計画の第1期は,介護保険事業計画が3年を1期となった時に同時スタートしたために,介護保険事業計画と足並みをそろえて3年を1期としたと考えられます。


これとは別の話ですが,近年の改正では,医療計画と医療費適正化計画が5年を1期から6年を1期に変わりました。


その理由は,介護保険事業計画が3年を1期とするためです。


5年を1期とするものと3年を1期とするものが同時スタートするのは,15年に1度しかありません。


それを6年を1期にすると6年ごとに同時スタートすることができます。さらには,医療計画は3年ごとに見直すことになっているので,密接に計画することが可能となります。


それでは,今日の問題です。


第26回・問題45 福祉計画等と事業の財源との関係に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,市町村介護保険事業計画に規定する介護サービスの見込量に基づき,その市町村に居住する第2号被保険者の保険料額を定めなければならない。

2 国は,市町村健康増進計画に基づいて,住民の健康増進のために必要な事業を行う市町村に対し,予算の範囲内で事業費の一部を補助することができる。

3 市町村は,都道府県医療費適正化計画に規定される医療費の見通しに基づいて,国民健康保険料を定めなければならない。

4 市町村は,市町村障害福祉計画に規定する障害福祉サービスの見込量に基づき,利用者負担額を定めなければならない。

5 都道府県は,市町村老人福祉計画に規定するサービスの見込量に基づき,市町村に対し,養護老人ホームの入所に係る措置費の一部を補助することができる。


正解は,選択肢2です。

2 国は,市町村健康増進計画に基づいて,住民の健康増進のために必要な事業を行う市町村に対し,予算の範囲内で事業費の一部を補助することができる。


これが正解ですが,市町村健康増進計画の内容によって,補助金額が変わるわけではありません。


この文章は「市町村健康増進計画に基づいて」がなくても「国は,住民の健康増進のために必要な事業を行う市町村に対し,予算の範囲内で事業費の一部を補助することができる」でも良いものです。


実にうまい問題だと思います。


選択肢1はうっかりすると間違いそうです。


1 市町村は,市町村介護保険事業計画に規定する介護サービスの見込量に基づき,その市町村に居住する第2号被保険者の保険料額を定めなければならない。


市町村が定めるのは,第2号被保険者の保険料です。


3 市町村は,都道府県医療費適正化計画に規定される医療費の見通しに基づいて,国民健康保険料を定めなければならない。

4 市町村は,市町村障害福祉計画に規定する障害福祉サービスの見込量に基づき,利用者負担額を定めなければならない。


この2つはでたらめです。


5 都道府県は,市町村老人福祉計画に規定するサービスの見込量に基づき,市町村に対し,養護老人ホームの入所に係る措置費の一部を補助することができる。


養護老人ホームは,なぜかわかりませんが,老人福祉法では国の補助も都道府県の補助も規定していないのです。


補助があるのは,居宅における介護等です。

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