市町村と都道府県の役割を覚える場合,福祉サービス利用に関するものの事務は基本的に市町村の役割です。
市町村は直接的な住民サービスに関する事務を行うからです。
しかし,児童の領域は,少し異なります。
通所関係は,市町村の取り扱い事務です。
入所関係は,都道府県の取り扱い事務です。
このように,市町村と都道府県の役割の分担があります。
さて,今回のテーマは,「子ども・子育て支援制度」です。
子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て支援制度は,
・子ども・子育て支援給付
・地域子ども・子育て支援事業
・仕事・子育て両立支援事業
の3つで構成されています。
児童福祉法と異なり,子ども・子育て支援制度の中には,入所系サービスはありません。
入所系は児童福祉法の範囲です。
このような子ども・子育て支援制度の特徴の特徴から,都道府県の役割は,都道府県子ども・子育て支援事業支援計画の策定など,ほんの少ししかありません。
別の言い方をすると,子ども・子育て支援制度のほとんどは市町村が行う事務である,ということです。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題44 社会福祉制度の利用に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童福祉法によれば,市町村は,児童養護施設への入所申請があった場合,入所の措置を採らなければならない。
2 子ども・子育て支援法によれば,認定子ども園を利用する場合,保護者は,市町村から支給認定を受けなければならない。
3 生活保護法によれば,保護の実施機関は,保護の開始の申請のあった日から七日以内に決定内容を申請者に通知しなければならない。
4 「障害者総合支援法」によれば,市町村は,介護給付費等を支給決定障害者等に代わって,指定障害福祉サービス事業者等に支払うことはできない。
5 介護保険法によれば,都道府県は,指定する介護老人福祉施設の行う介護福祉施設サービスの利用に対して,施設介護サービス費を支給しなければならない。
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
正解は,選択肢2です。
2 子ども・子育て支援法によれば,認定子ども園を利用する場合,保護者は,市町村から支給認定を受けなければならない。
認定子ども園を認定するのは都道府県の役割ですが,支給認定を行うのは市町村の役割です。
これは,市町村と都道府県の役割の典型例です。
直接的な住民サービスに関するものは,市町村
基盤整備などに関するものは,都道府県
このような基本を押さえておけば,どのような領域でも応用できます。
そのうえで例外を押さえると鬼に金棒です。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 児童福祉法によれば,市町村は,児童養護施設への入所申請があった場合,入所の措置を採らなければならない。
児童福祉法では,入所は都道府県の役割です。
通所が市町村の役割です。
もうさすがに理解できてきたのではないでしょうか。
3 生活保護法によれば,保護の実施機関は,保護の開始の申請のあった日から七日以内に決定内容を申請者に通知しなければならない。
正解は,14日以内です。
7日では短すぎます。
4 「障害者総合支援法」によれば,市町村は,介護給付費等を支給決定障害者等に代わって,指定障害福祉サービス事業者等に支払うことはできない。
もちろん,障害福祉サービスにも「代理受領」の仕組みはあります。
本来,福祉サービス費は,利用者に支給するものです。
しかし,この仕組みでは,利用者は一度全額を支払い,その後で還付されることになるので,後で戻ってくると言っても,先に支払うのは大変です。
そのため,利用者に支給するのではなく,サービス提供事業者に支給する,「代理受領」という仕組みを採用しています。
5 介護保険法によれば,都道府県は,指定する介護老人福祉施設の行う介護福祉施設サービスの利用に対して,施設介護サービス費を支給しなければならない。
介護保険制度や老人福祉制度,障害福祉制度の実施主体は市町村です。
障害福祉制度には,専門性の高いものがあるので,地域生活支援事業などのように都道府県が行う住民サービスもありますが,介護保険制度や老人福祉制度では,住民サービスに関して都道府県が行うものはほとんどありません。