福祉行政は,厚生労働省が管轄する事務です。
社会福祉士の国家試験に出題される法制度のうち,注意が必要なのは,障害者基本法と子ども・子育て支援法です。
これらは,内閣府が所管しています。
なぜなら,施策が多領域にわたるため,内閣府が司令塔となって推進することが必要だからです。
事業者の指定・承認・認可は,多くの場合,都道府県の役割ですが,厚生労働大臣が行うレアなものがあります。
たとえば,特定機能病院などです。数が少ないために国が行った方が効率的です。
基本的な住民サービスは市町村が行い,市町村が行うには効率的ではないものを都道府県が行います。
この関係性は,どの領域でも共通です。
国家試験では,こういったことを考えながら問題を解くとミスを防ぐことができるでしょう。
ちょっと変わった制度として,民生委員があります。
都道府県知事が推薦して,厚生労働大臣が委嘱します。
民生委員の歴史をひもとくと,2000年までは民生委員は名誉職でした。
方面委員の時代は道府県長官が選任する仕組みでしたが,方面委員令は天皇の勅令でしたので,当時の人にとって,十二分に名誉感があったのではないでしょうか。
戦後,勅令ではなく,民生委員法になったときに,名誉感を演出するために,都道府県知事が委嘱するのではなく,大臣が委嘱する仕組みにしたのではないかと思います。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題42 福祉行政における厚生労働大臣の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 民生委員法に基づき,都道府県知事の推薦によって民生委員を委嘱する。
2 介護保険法に基づき,要介護認定の結果を通知する。
3 生活困窮者自立支援法に基づき,生活困窮者就労訓練事業の認定を行う。
4 「障害者総合支援法」に基づき,市町村審査会の委員を任命する。
5 子ども・子育て支援法に基づき,子ども・子育て支援事業計画の基本指針を定める。
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
この1つの選択肢を整理すると,以下のようになります。
国の役割 |
厚生労働大臣 |
民生委員法に基づき,都道府県知事の推薦によって民生委員を委嘱する。 |
内閣総理大臣 |
子ども・子育て支援法に基づき,子ども・子育て支援事業計画の基本指針を定める。 |
|
都道府県知事の役割 |
生活困窮者自立支援法に基づき,生活困窮者就労訓練事業の認定を行う。 |
|
市町村長の役割 |
介護保険法に基づき,要介護認定の結果を通知する。 「障害者総合支援法」に基づき,市町村審査会の委員を任命する。 |
正解は,選択肢1ですが,この問題の答えを一生懸命覚えても同じ問題は,出題されることはありません。
基本を押さえることが何よりも大切です。
次回は,市町村と都道府県の役割の違いを整理したいと思います。