民生費とは,地方公共団体の歳出のうち,福祉にかかる費用のことをいいます。
民生費の出題は毎年のようにありますが,覚えるのが面倒なこともあり,苦手な人も多いようです。
地方公共団体の歳出の割合は,市町村と都道府県では順位が異なるのが面倒なものです。
〈地方公共団体の歳出〉
都道府県で最も多いのは「教育費」です。
市町村と都道府県を合わせると最も多いのは「民生費」です。
民生費の内訳も面倒です。
〈民生費の内訳〉
市町村で最も多いのは「児童福祉費」です。
都道府県で最も多いのは「老人福祉費」です。
市町村と都道府県を合わせると最も多いのは「児童福祉費」です。
老人福祉費が最も多いように思う人は多いと思いますが,民生費は福祉にかかる費用を計上するものなので,社会保険制度である介護保険にかかる費用は民生費ではなく,介護保険特別会計という項目に計上されます。
今日の高齢者施策の中心は介護保険なので,老人福祉にかかる費用はそれほど多くはないのです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題45 「平成27年版地方財政白書」(総務省)に基づく2013年度(平成25年度)の市町村の民生費に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 目的別歳出のうち,民生費の割合は総務費の割合より少ない。
2 目的別歳出の民生費のうち,老人福祉費の割合は児童福祉費の割合より少ない。
3 目的別歳出の民生費のうち,市町村の歳出額は都道府県の歳出額より少ない。
4 民生費の性質別内訳をみると,扶助費の割合は人件費の割合より少ない。
5 民生費の目的別扶助費の状況をみると,補助事業の割合は単独事業の割合より少ない。
古い統計ですが,今も傾向は一切変わっていません。社会福祉士の国家試験で取り扱うものは,年度によって変化があるものを避けて出題しています。
「順位が変わったところが出題される」という人がいますが,それは今の国家試験を知らない人の話です。
それでは解説です。
1 目的別歳出のうち,民生費の割合は総務費の割合より少ない。
市町村で最も多いのは,民生費です。
2 目的別歳出の民生費のうち,老人福祉費の割合は児童福祉費の割合より少ない。
これが正解です。
市町村で最も多いのは,児童福祉費です。
そのために,老人福祉費は児童福祉費よりも少なくなるのは当然です。
都道府県では,老人福祉費が最も多いので注意が必要です。
3 目的別歳出の民生費のうち,市町村の歳出額は都道府県の歳出額より少ない。
市町村と都道府県を比較すると,市町村のほうが多くなっています。
直接的な住民サービスを行うのは市町村だからです。
4 民生費の性質別内訳をみると,扶助費の割合は人件費の割合より少ない。
民生費の性質別内訳も市町村と都道府県では異なるものです。
市町村が最も多いのは,扶助費です。
都道府県が最も多いのは,補助費です。
扶助費とは,実際に住民に給付するものです。直接的な住民サービスを行うのは市町村なので,扶助費が一番多くなるのは当然です。
補助費は,団体や施設などに補助するものです。都道府県が住民に給付するものはほとんどないので,扶助費よりも補助費のほうが多くなります。