現時点(2023年1月)では,婦人相談所は売春防止法に規定されています。
2022年に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が成立したのをご存じでしょうか。
婦人保護事業は,これまで売春防止法が担っていましたが,「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」の成立に伴い,婦人保護事業に関する規定はばっさりと削られ,本来の売春防止のみが残されました。
2024年に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が施行されると,婦人相談所は,この法に基づく「女性相談支援センター」に生まれ変わります。
しかし,これらが国家試験に出題されるのは,数年先のことでしょう。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題43 福祉行政における専門組織に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 婦人相談所は,母子及び父子並びに寡婦福祉法に基づき設置され,配偶者暴力相談支援センターとしての機能を兼ねることができる。
2 児童相談所は,社会福祉法に基づき設置され,児童の健康相談に応じ,又は健康診査を行い,必要に応じ,保健指導を行うことができる。
3 身体障害者更生相談所は,障害者基本法に基づき設置され,必要に応じ,巡回して業務を行うことができる。
4 地域包括支援センターは,介護保険法に基づき設置され,介護予防ケアマネジメント業務,総合相談支援業務,権利擁護業務及び包括的・継続的ケアマネジメント支援業務を行うこととされている。
5 福祉事務所は,地方自治法に基づき設置され,所長は,設置する地方公共団体の長が,議会の同意を得て選任することとされている。
ずいぶん古い問題ですが,実に社会福祉士の国家試験らしい問題です。
それは,根拠法を変えて出題しているからです。
単純な問題ですが,正解するのはとても難しいものてせす。
平成19年度カリキュラム改正によって,「福祉行財政と福祉計画」が誕生し,第22回国家試験から登場しました。
令和元年度カリキュラムでこの科目はほかの科目に吸収されたので,国家試験にあるのは,第22~36回ということになりました。
今日の問題は,第23回のものなので,この科目としては,2回目の登場です。この頃,ゼロ点科目が最も多く出たのが,実はこの科目です。
どんな問題が出題されるかがよくわからなかったために,対策が取りにくかったこともあります。
それから国家試験を積み重ねてきたこともあり,今はそれほど得点しにくい科目ではなくなってきています。出題される内容や出題の仕方が固定化しているからです。
そういった意味で,令和元年度カリキュラムでは消滅した科目ですが,科目を作った目的は果たしたと言えるのかもしれません。
それでは,今日の問題の解説です。
1 婦人相談所は,母子及び父子並びに寡婦福祉法に基づき設置され,配偶者暴力相談支援センターとしての機能を兼ねることができる。
早速,今日のテーマは「婦人相談所」です。
婦人相談所は,売春防止法に基づく機関です。今後は,「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」に基づく「女性相談支援センター」に移行します。
2 児童相談所は,社会福祉法に基づき設置され,児童の健康相談に応じ,又は健康診査を行い,必要に応じ,保健指導を行うことができる。
この問題は,論点が2つあるダブルバーレルとなっています。
現在は,こういったダブルバーレル問題は作られていません。
2つのポイントとは,児童相談所は児童福祉法に基づく機関であり,児童の健康相談や健康診査を行うのは保健所です。
3 身体障害者更生相談所は,障害者基本法に基づき設置され,必要に応じ,巡回して業務を行うことができる。
身体障害者更生相談所は,注意が必要なものです。
身体障害者福祉法に基づいて,都道府県は身体障害者更生相談所を設置しなければなりません。
身体障害者更生相談所は,以下の業務を行います。
1 市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供その他必要な援助を行うこと及びこれらに付随する業務を行う。 2 身体障害者に関する相談及び指導のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものを行う。 3 身体障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行う。 4 必要に応じ、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための補装具の処方及び適合判定を行うこと。 |
2~4の業務は,住民からすると都道府県レベルでは遠すぎます。そのために,「必要に応じ、巡回して、前項に規定する業務を行うことができる」という規定があります。
都道府県が設置する身体障害者更生相談所に自ら行くのは大変なので,その代わりに,更生相談所が身近なところに来て業務を行うのです。
住民にとっては有難い仕組みです。
4 地域包括支援センターは,介護保険法に基づき設置され,介護予防ケアマネジメント業務,総合相談支援業務,権利擁護業務及び包括的・継続的ケアマネジメント支援業務を行うこととされている。
これが正解です。
地域支援事業の包括的支援事業のうち,この4つがいわゆる地域包括支援センター事業と呼ばれるものです。
5 福祉事務所は,地方自治法に基づき設置され,所長は,設置する地方公共団体の長が,議会の同意を得て選任することとされている。
これもダブルバーレルになっているものです。
福祉事務所は,社会福祉法に基づいて設置され,所の長の選任に対しては議会の同意は必要とされません。