今回は,地方公共団体の歳入について取り組みます。
最も多いのは,地方税です。約40%が地方税で占められます。ただし,50%は越えていないところが注意ポイントです。
そのほかの財源では,地方交付税と国庫支出金がそれぞれ15%程度となっています。
大昔は,国がお金を集めて,地方交付税や国庫支出金として地方に支出してきましたが,近年は,地方分権の流れによって,財源移譲のために地方税が最も多くなっています。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題46 「令和2年版地方財政白書」(総務省)における地方財政の状況(普通会計)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県及び市町村の歳入純計決算額では,地方交付税の割合が最も大きい。
2 都道府県の目的別歳出では,土木費の割合が最も大きい。
3 市町村の目的別歳出では,民生費の割合が最も大きい。
4 都道府県の性質別歳出では,公債費の割合が最も大きい。
5 市町村の性質別歳出では,補助費等の割合が最も大きい。
この問題の設問には(普通会計)と出題されています。
その理由は,第30回国試では,民生費と特別会計を混ぜた問題を出題されて,受験生を混乱させたからです。
地方公共団体の会計には,普通会計と特別会計があります。社会福祉士の国家試験で出題されるもののうち,特別会計を組まなければならないものは,介護保険と国民健康保険の2つです。
特別会計は,それ以外の支出とは別に計上するものです。財政が明確になるからでしょう。
なお,地方公共団体の歳入の問題は,しぱらくは出題しにくいと言えます。近年の動きによって,順位が変動しているからです。
それでは解説です。
1 都道府県及び市町村の歳入純計決算額では,地方交付税の割合が最も大きい。
地方公共団体の歳入のうち,最も大きな割合を占めているのは地方税です。
ただし,令和4年度地方財政白書では,新型コロナウイルス対策のため,国庫支出金が増加し,地方税の方が大きくなりました。
このように年度によって順位に変動があるものは,出題されません。
明治以降の近代日本では,産業が十分に発達していなかったこともあり,国がお金を集めて(つまり国税),地方公共団体に支出するスタイルを取ってきました。
しかし,今は地方分権化の時代です。
2000年代初頭に行われた三位一体改革によって,財源を地方に移し,地方交付税を削減しました。
そのために地方税が最も大きくなっていると覚えると良いです。(もとに戻ればの話)
2 都道府県の目的別歳出では,土木費の割合が最も大きい。
3 市町村の目的別歳出では,民生費の割合が最も大きい。
〈目的別歳出〉
純計(市町村+都道府県) → 民生費
都道府県 → 教育費
市町村 → 民生費
つまり,正解は,選択肢3です。
4 都道府県の性質別歳出では,公債費の割合が最も大きい。
5 市町村の性質別歳出では,補助費等の割合が最も大きい。
〈民生費の性質別歳出〉
純計(市町村+都道府県) → 補助費等
都道府県 → 補助費等
市町村 → 扶助費
都道府県と市町村に分けると順位が変わるのは,それぞれの役割の違いのためです。
市町村は,直接的な住民サービスを行い,都道府県は市町村が行うのに向かない事務を行います。