2023年10月11日水曜日

困難な問題を抱える女性への支援に関する法律

 

困難な問題を抱える女性支援の根拠法は,長らく売春防止法が担っていましたが,「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(困難女性支援法)に移行します(施行:令和6年4月1日)。

 

これによって,過去問を解くときは,以下のように読み替えることが必要です。

旧(売春防止法)

新(困難女性支援法)

婦人相談所

女性相談支援センター

婦人保護施設

女性自立支援施設

婦人相談員

女性相談支援員


困難な問題を抱える女性への支援に関する法律が成立した背景には,今日の女性をめぐる課題は,生活困窮,性暴力・性犯罪被害,家庭関係破綻など,複雑化・多様化・複合化していることがあります。

さて,令和元年度カリキュラムでは,「福祉行財政と福祉計画」が「地域福祉と包括的支援体制」に統合されています。

従来の「地域福祉の理論と方法」も手ごわい科目でしたが,「地域福祉と包括的支援体制」の出題範囲がさらに広がったことでさらに手ごわくなります。

 

「福祉行財政と福祉計画」という科目が消滅したことで,受験が楽になったとは決して思ってはいけません。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

32回・問題42

地方公共団体に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 特別区を設置できるのは,都に限定されている。

2 都道府県が処理する社会福祉に関する事務は,機関委任事務である。

3 中核市の指定要件として,人口数は50万以上と定められている。

4 広域連合は,介護保険事業に関する事務を処理できないとされている。

5 政令指定都市は,婦人相談所を設置することができる。

 

37回国家試験以降に受験する人は,婦人相談所を「女性相談支援センター」に読み替えることが必要です。

ただし,設置などの規定に関しての変更はありません。

 

この問題は,作り方が下手なので,知識がなくても正解できる可能性が高い問題ですが,正解することを目的に過去問を解くのはやめてください。

正解以外のものをしっかり覚えなければ,過去問を解きながら国試勉強をする意味が半減します。

 

それでは,解説です。

 

1 特別区を設置できるのは,都に限定されている。

 

この問題で最も注意しなければならないのは,この選択肢です。

現在,特別区を設置しているのは,東京都しかありません。

 

しかし,「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(2012・平成24年)によって,都以外も特別区を設置することができるようになりました。

 

指定都市などにある区と特別区との違いは,特別区は,区長は選挙で選ぶ,独自に条例を定めることができるなど,市町村とほぼ同様の扱いや権限をもつことができることです。

 

2 都道府県が処理する社会福祉に関する事務は,機関委任事務である。

 

現在の地方公共団体の事務は,自治事務と法定受託事務の2つしかありません。

 

法定受託事務は,地方自治法の別表で規定されています。

自治事務は,法定受託事務以外の事務です。

なお,社会福祉に関する事務の多くは,自治事務ですが,認可,支給など全国の基準があるようなものは,法定受託事務です。

 

国家試験でよく問われているのは,生活保護の決定に関する事務です。

これは,自治事務でしょうか。法定受託事務でしょうか。

 

答えは,法定受託事務です。自立の助長に関しては,国家試験には出題されたことはありませんが,自治事務です。

 

3 中核市の指定要件として,人口数は50万以上と定められている。

 

中核市の指定条件は,人口20万人以上です。

50万人以上と定められているのは,政令指定都市です。

 

なお,政令指定都市と指定都市は,同じ意味です。地方自治法では,指定都市となっています。

 

4 広域連合は,介護保険事業に関する事務を処理できないとされている。

 

広域連合は,特別地方公共団体に位置づけられます。

特別地方公共団体は,ごみを共同で処理する,消防活動を合同で行う,などの一部事務組合がよく知られます。

介護保険事業に関する事務も複数の市町村が共同して行う広域連合が認められています。

 

5 政令指定都市は,婦人相談所を設置することができる。

 

これが正解です。

 

女性相談支援センターの設置

都道府県は,設置しなければなりません。

政令指定都市は,設置することができます。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

今日の問題は,問題づくりが下手だと書きました。

その理由は,「政令指定都市は,婦人相談所を設置することができる」を正解にしたからです。

知識がなくても,「●●することができる」は「●●することができない」よりも感覚的に正解になりやすいことを感じとることができるからです。

 

今後は,今日の問題のような下手な問題が出題されることは少なくなるはずです。

過去問で正解できることは正解できないよりも良いことです。

しかし,正解することを主眼に置いた勉強では,合格できる知識,実力にはならないことを肝に銘じておいてください。

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