2023年10月20日金曜日

傷病手当金について

医療保険は,療養の給付とともに現金給付のものがあります。


健康保険で規定される現金給付のものの代表は,傷病手当金です。


傷病手当金は,傷病によって労務不能になった日から,連続した3日間のあと,4日目から通算して1年6か月間給付されます。


労務不能となった事由が業務上の傷病によるものであれば,傷病手当金ではなく,労働者災害補償保険の休業補償給付の対象となります。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題51

会社に勤めている人が仕事を休業した場合などの社会保障制度上の取扱いに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 健康保険の被保険者が病気やケガのために会社を休んだときは,標準報酬月額の2分の1に相当する額が傷病手当金として支給される。

2 厚生年金の被保険者に病気やケガが発生してから,その症状が固定することなく1年を経過し,一定の障害の状態にある場合は,障害厚生年金を受給できる。

3 育児休業を取得する場合に支給される育児休業給付金は,子どもが3歳になるまでを限度とする。

4 労働者が業務災害による療養のため休業し,賃金を受けられない日が4日以上続く場合は,労働者災害補償保険による休業補償給付を受けられる。

5 育児休業期間中の厚生年金保険料は,被保険者分のみ免除される。


労働力を商品化する労働者にとって,さまざまな理由によって働けなくなることは,生活の基盤を揺るがす大きな問題です。


そのため,社会保障制度では,さまざまな金銭給付の制度を設けて,貧困予防(防貧的),あるいは貧困救済(救貧的)を行っています。


それでは,解説です。


1 健康保険の被保険者が病気やケガのために会社を休んだときは,標準報酬月額の2分の1に相当する額が傷病手当金として支給される。


傷病手当金の給付率は,標準報酬日額の3分の2です。


2 厚生年金の被保険者に病気やケガが発生してから,その症状が固定することなく1年を経過し,一定の障害の状態にある場合は,障害厚生年金を受給できる。


障害年金の場合,傷病が固定した時点,傷病が固定しない場合は障害認定日から1年6か月を経過した日に,一定の障害がある場合に給付されます。


障害厚生年金の場合は,1級,2級,3級

障害基礎年金の場合は,1級,2級


にあたる場合に給付されます。


3 育児休業を取得する場合に支給される育児休業給付金は,子どもが3歳になるまでを限度とする。


現在の育児休業給付金は,何らかの理由がある場合(保育所を利用することができないなど)は,3歳まで給付可能です。


4 労働者が業務災害による療養のため休業し,賃金を受けられない日が4日以上続く場合は,労働者災害補償保険による休業補償給付を受けられる。


これが正解です。


業務上の傷病  → 労働者災害補償保険による休業補償給付

それ以外の傷病 → 健康保険による傷病手当金



5 育児休業期間中の厚生年金保険料は,被保険者分のみ免除される。


育児休業期間中の厚生年金保険料は,被保険者分だけではなく事業者分も免除されます。


〈今日の注意ポイント〉


休業補償給付と傷病手当金は,どちらも傷病によって,労働できず,賃金の支給を受けられない場合の所得補償です。


労働できなくなった場合の理由が業務災害・通勤災害の場合は,休業(補償)給付,それ以外は,傷病手当金が給付されます。

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