社会福祉士の国試は,歴史の試験ではありません。
〇〇年に〇〇があったというような覚え方が必要な問題はほとんどありません。
必要なのは,いつ頃の時代の出来事なのかということです。
さて,高齢者福祉の発展過程に出題される内容はほぼ決まっています。
とんでもなくマイナーな施策が出題されたことはありません。
それでは今日の問題です。
第30回・問題131 高齢者に関わる保健医療福祉施策に関する次の記述のうち,施策の開始時期が最も早いものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法による70歳以上の者に対する老人医療費支給制度
2 老人保健制度
3 老人福祉法による65歳以上の者に対する健康診査
4 介護保険制度
5 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)
時代を聞かれる出題は,現行カリキュラムでは初めての問題です。
最後に,これに似たような問題が出題されたのは第21回が最後でした。
第21回・問題101 児童福祉分野の法律等の制定に関する次の記述のうち,年代の古い順に並べたときに第3番目に位置するものとして,正しいものを一つ選びなさい。
1 「児童手当法」が制定される。
2 「児童扶養手当法」が制定される。
3 「児童虐待の防止等に関する法律」が制定される。
4 「次世代育成支援対策推進法」が制定される。
5 「児童憲章」が制定される。
この問題では,第3番目に来るものを当てさせることが大切な問題であったように思います。
というのは,日本において,児童手当の創設は社会保障制度の中では遅い時期になったからです。
順番は
①1951年 児童憲章
②1961年 児童扶養手当法
③1971年 児童手当法
④2000年 児童虐待防止法
⑤2003年 次世代育成支援対策推進法
この問題では出題されていませんが,特別児童扶養手当法が制定されたのは,1964年です。
わが国では,児童に関する手当は,特別ニーズのある児童の手当てが先に創設されて,普遍的な手当てである児童手当がそのあとに創設されていることが特徴です。
さて,今日の問題に戻ります。
順番は
①1963年 老人福祉法による65歳以上の者に対する健康診査
②1973年 老人福祉法による70歳以上の者に対する老人医療費支給制度
③1982年 老人保健制度
④1989年 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)
⑤2000年 介護保険制度
となります。
<今日の一言>
国試問題の中の正解選択肢は,その試験委員が最も知ってもらいたいものを意味しています。
そういった意味で,老人保健制度は,老人福祉法に含められていたということを知ってもらいたかったことなのだと推測できます。
高齢者福祉の発展過程は,内容が繰り返されているので,正解になったものが,別の回では間違いとして出題されたり,間違いになったものが,別の回では正解として出題されたり,が繰り返されています。
今日の問題は,高齢者福祉の発展過程を学ぶときの骨組みとなるものです。
しっかり覚えておきたいです。
最新の記事
消費者契約法
契約を取り消すことができる制度として,クーリング・オフ制度があります。 しかし,利用できるのは,訪問販売や電話に勧誘などによって契約したものに限られます。 消費者契約法は,以下のような場合に取り消すことができます。 出典:消費者庁「知っていますか? 消費者契約法―早わかり!消費...
過去一週間でよく読まれている記事
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
コミュニティはさまざまな人が定義していますが,ヒラリーの研究によって,それらに共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが示されました。 しかし,現代では,空間が限定されないコミュニティが広がっています。それをウェルマンは,「コミュニティ開放論」と...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...
-
診断主義は,1920年代に登場して,現在は,心理社会的アプローチに発展しています。 機能主義は,機能主義の批判的な立場で,1930年代に登場して,現在,機能的アプローチに発展しています。 それでは,今日の問題です。 第32回・問題101 ソーシャルワーク実践理論の基礎に関する次...