今回は,福祉ニードを取り上げたいと思います。
ニーズは,ニードの複数形ですが,明確な使い分けはなされていないようです。
どちらも同じ意味だととらえて良いでしょう。
ブラッドショーは,ニーズを以下のように類型化しています。
感得されたニード
(フェルト・ニード)
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ニードがあることを本人が自覚したニード
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表明されたニード
(エクスプレスト・ニード)
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ニードがあることを自覚した結果,行動に出たニード
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比較ニード
(ノーマティブ・ニード)
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サービス受給していないが,サービス受給している人と比べてみることでニードがあるとされるニード
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規範的ニード
(コンパラティブ・ニード)
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社会的に望ましい状態(社会規範)に照らしてみてニードがあるとみなされるニード
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どの参考書にも必ずこの4類型は書かれていると思います。
出題頻度が高いので,しっかり押さえておきたいです。
「感得されたニード」と「表明されたニード」は,比較的理解しやすいと思いますが,「比較ニード」と「規範的ニード」の理解はちょっと大変です。
「比較ニード」と「規範的ニード」は,専門職がニードを判定するための物差しです。
対人援助をしている人は,要注意です。
日常では,クライエントのニードをアセスメントして,プランニングしていく活動を行っています。
そのため,専門職がニードのありなしを判定するという概念は理解しにくいものでしょう。
具体的に言えば,法を適用させる時は,ニードのありなしを専門職が判定します。
例えば,要介護認定です。
本人が申請しても,非該当となることもあるでしょう。
非該当とは,介護保険の介護給付・予防給付の対象ではない,つまり介護ニードはないと判定した結果です。
生活保護も同様です。
保護申請しても,却下されることもあるでしょう。
この場合は,収入が最低限度の生活を送るための基準よりも上回ったと判定したこととなります。
また,急迫している場合は,保護申請がなくても職権での保護が行われます。
この場合,急迫していると判断するのは,専門家です。
福祉政策では,ニードをどのように考えるかがとても重要です。
福祉政策におけるニード判定とは,給付にかかわる問題です。
そのために「現代社会と福祉」で,ニードについて出題しているのだと思います。
対人援助でのニードと同じようにとらえていると国家試験で間違える元となりますので,注意が必要です。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題27 個人の福祉ニードに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 利用者のフェルト・ニードとは,専門職が社会規範に照らして把握する福祉ニードのことである。
2 人々の心身機能の状態が同一であれば,福祉ニードも同一である。
3 経済的な福祉ニードは,相談援助の対象とはならない。
5 福祉サービスの利用を拒んでいる人の福祉ニードは,専門職の介入によって把握されることはない。
この問題は,ブラッドショーのニードの類型がわからなくても,正解できる確率が極めて高い問題です。
なぜなら正解は
4 サービス供給体制の整備に伴い,潜在的な福祉ニードが顕在化することがある。
ほかの選択肢の内容がわからなくても,この文章の意味はつかみやすいのです。
また,社会福祉士の国家試験では,「ことがある」が正解にならなかったことは一度もありません。つまり今まではすべて正解となっています。
ただし,「ことがある」=「正解」とは,単純に思わないようにしましょう。
高度な作問技術を持つ試験委員がいた場合,逆手にとって出題する可能性があるからです。
それでは,ほかの選択肢の解説です。
1 利用者のフェルト・ニードとは,専門職が社会規範に照らして把握する福祉ニードのことである。
フェルト・ニードのフェルトは,Feel(感じる)の派生形です。
つまり感得されたニードということになります。
専門職が社会規範に照らして把握する福祉ニードとは,規範的ニードを述べています。
2 人々の心身機能の状態が同一であれば,福祉ニードも同一である。
これは,現場の人なら,まず間違えないと思います。
福祉政策の点で考えると,例えば,生活保護は,心身機能で判定するのはなく,収入で判定します。心身機能では判定できないということです。
3 経済的な福祉ニードは,相談援助の対象とはならない。
医療ソーシャルワーカー業務指針では,経済的・心理的・社会的な問題を援助対象とすることを明記しているように,経済的な福祉ニードは相談援助の対象です。
5 福祉サービスの利用を拒んでいる人の福祉ニードは,専門職の介入によって把握されることはない。
「比較ニード」「規範的ニード」は,専門職の介入によって,ニードの把握されるものです。
<今日の一言>
解答テクニック
あいまい表現に正解多し
言い切り表現に正解少なし
今日の問題は,あまりにもわかりやすいので解答テクニックを持ち出すまでもありませんが,この2つを常に念頭に入れておいてほしいと思います。
あいまい表現に正解多し
4 サービス供給体制の整備に伴い,潜在的な福祉ニードが顕在化することがある。
言い切り表現に正解少なし
5 福祉サービスの利用を拒んでいる人の福祉ニードは,専門職の介入によって把握されることはない。
特に,言い切り表現に正解少なしは,消去法を使うときにとても有効です。
つまらないミスを減らすことができます。