あなたに質問です。
現代のわが国の所得格差は広がっているのでしょうか?
多くの人は,「はい」と答えるでしょう。
しかし,厳密に言うと,この答えは,「はい」でもあるし,「いいえ」でもあります。
所得格差を表わすものに「ジニ係数」があります。
0から1の範囲で示し,数値が大きい方が,所得格差が大きいことを示します。
さて,最初の問いの答えです。
当初所得(所得再分配前の所得)は,広がっているので「はい」。
所得再分配後の所得は,広がっていないので「いいえ」。
所得格差の縮小に貢献するものが「社会保障制度」です。
所得再分配には
所得が高い者から低い者へ分配する「垂直的再分配」
稼働できる者から稼働できない者へ分配する「水平的再分配」
といった福祉政策があります。
理屈っぽい人だと思われるかもしれませんが,社会福祉の専門家としては,
「所得格差は広がっている」という意見があった場合,当初所得の格差は広がっているが,所得再分配後の格差はむしろ縮小傾向にある,と考えたいところです。
補足ですが,垂直的再分配には,累進課税による所得税などがあります。
税財源を使って,社会福祉制度や生活保護制度を運用しています。
水平的再分配には,社会保険制度があります。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題15 次のうち,所得格差を示す指標として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 エンゲル係数
2 ジニ係数
3 幸福度指標
4 貧困線
5 GDP
答えは,選択肢2のジニ係数です。
間違いやすいものとしては,1 エンゲル係数 があります。
エンゲル係数は,世帯の貧困度合いを示すものです。
必要とされる食費は,世帯によってそれほど変わらないという理論から,支出全体の中に占める食費の率が高い方が貧困状態にあることを示します。
ほかの選択肢も見てみましょう。
3 幸福度指標
幸福度合いを示すものです。
4 貧困線
エンゲル係数と同じく,世帯の貧困度合いを示すものです。
5 GDP
GDPは,国内総生産の略です。以前は,国民総生産(GNP)が使われていましたが,現在は,グローバル化が進んでいることもあり,GDPが使われるようになっています。
GDPは,国の経済力を示すものです。