2020年6月5日金曜日

防衛機制(適応機制)の基礎知識

 防衛機制(適応機制)は,不安や欲求不満があった場合にそれを解消しようとする心理メカニズムをいいます。
 種類がたくさんあるので覚えにくいですが,頑張って覚えるしかありません。
 近年では,第26回・第27回・第29回・第31回に出題されています。

用語
出題回数
26
27
29
31
昇華
4回
合理化
3回

反動形成
2回


投影
2回


抑圧
2回


退行
2回


転換
1回



同一化
1回



取り入れ
1回



置き換え
1回



補償
1回




ピンクで塗りつぶしたものが,その回の正解となったものです。

着目してほしいのは,直近の出題である第31回国試です。
上3つは,出題頻度の高いものが出題されていますが,正解となった「置き換え」も含めて,下の2つは現在のカリキュラムではそれまでに登場していません。

防衛機制の出題頻度は高くても,第31回国試は,過去3年間の過去問を解いただけでは正解できないことを意味しています。
参考書などでまんべんなく覚えることが必要なことを示していると言えるでしょう。
なぜこのような出題にしたのかは,何となく意味がわかるように思います。
 というのは,第30回国試では,いわゆるボーダーラインが99点という前代未聞のものになってしまったことで,第31回は,出題頻度の高い防衛機制を出題しながら,昇華や合理化といったスタンダードなものを正解にしなかったと思うのです。

それでは,今日の問題です。

29回・問題12 適応機制に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 抑圧とは,現在の発達段階より下の発達段階に逆戻りして,未熟な言動を行うことをいう。
2 昇華とは,ある対象に対して持っていた本来の欲求や本心とは反対の言動をとることをいう。
3 退行とは,苦痛な感情や社会から承認されそうもない欲求を,意識の中から閉め出す無意識的な心理作用のことをいう。
4 合理化とは,自分がとった葛藤を伴う言動について,一見もっともらしい理由づけをすることをいう。
5 反動形成とは,社会から承認されそうもない欲求を,社会から承認されるものに置き換えて充足させることをいう。

先述の表で答えはわかってしまいますが,正解は,選択肢4の「合理化」です。
4 合理化とは,自分がとった葛藤を伴う言動について,一見もっともらしい理由づけをすることをいう。

 合理化は,イソップ童話の「すっぱい葡萄(ぶどう)」を例にされることが多いものです。

この童話の中では,きつねが,木になっているぶどうを取ろうとしますが,何度チャレンジしてもそこまで届かず,「取れなくてよいのさ。あのぶどうはすっぱいぶどうなんだから」と言い訳をするという話です。

合理化は,抑圧,退行などと並んで,比較的理解しやすいものでしょう。
これらが正解となると問題の難易度は下がります。

それでは,ほかの選択肢も確認してみましょう。

1 抑圧とは,現在の発達段階より下の発達段階に逆戻りして,未熟な言動を行うことをいう。
 抑圧ではなく,「退行」です。


2 昇華とは,ある対象に対して持っていた本来の欲求や本心とは反対の言動をとることをいう。

昇華ではなく,「反動形成」です。

3 退行とは,苦痛な感情や社会から承認されそうもない欲求を,意識の中から閉め出す無意識的な心理作用のことをいう。

退行ではなく,「抑圧」です。

5 反動形成とは,社会から承認されそうもない欲求を,社会から承認されるものに置き換えて充足させることをいう。

反動形成ではなく,「昇華」です。

反動形成,昇華,投影などは理解が難しいので,これらが正解になる問題の難易度は上がります。

今日の問題では出題されていませんが,「投影」とは,自分の中の感情を相手が持っているように思うことです。

例えば,本当は,自分がAさんを嫌っているのに,Aさんが自分を嫌っている,と思うなどです。

<今日の一言>

防衛機制は,覚えるものの種類が多く,しかも理解しにくいものが含まれます。

あなたが試験委員なら,防衛機制を出題したいと思いませんか?

しっかり勉強した人は正解できますが,覚え方が甘い人は正解できないので,受験生の差が出やすいのです。

国家試験は,しっかり勉強した人は解ける,覚え方が甘い人は正解できないという問題が理想なのです。

勉強した人が解けない,勉強不足でも勘の良い人は解けるという問題は,国家試験の敵です。

そのため,現在の国試問題では後者のタイプの問題はほぼ出題されません。

運が良くて正解できるという国試ではありません。合格するためには確実な知識をつけることこそが必要です。

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