「社会理論と社会システム」は,人の名前がたくさん出てくるので,覚えるのが大変そうです。
しかし,本当に重要なのは,人の名前を覚えることではなく,その内容を覚えることです。
人の名前がわからなくて,解けないという問題はほとんどありません。
この科目や「心理学理論と心理的支援」は,人の名前は知らなくても,誰かが提唱したものを学んでいます。
ここが自然科学とは異なるところでしょう。
さて,今回,学ぶのは社会的行為です。
「行為」とは,外から観察可能な「行動」と異なり,その人にとって意味のあるものをいいます。
別な言い方をすると,外から観察可能な行動に意味づけするのが,行為だと言えるでしょう。
ウェーバーは,社会的行為を4つに分類しました。
目的合理的行為
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価値合理的行為
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伝統的行為
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感情的行為
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目的を達成するために行う行為。
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行動そのものに意味がある行為。結果は重視されない。
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慣習や習慣によって行う行為。
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感情によって行う行為。
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合理的がつくものとつかないものがありますが,すべて社会的行為です。
合理的がつかないものは,前近代的なもの。
合理的がつくものは,近代化の中で必要な行為。
といった意味合いなので,特に意識することはありません。4つすべてが社会的行為です。
国家試験に向けた行為を当てはめてみると
目的合理的行為は,国家試験に合格するために勉強する。
価値合理的行為は,国家試験に合格するためにお祈りする。
伝統的行為は,勉強することが毎日の習慣になっているので勉強する。
感情的行為は,勉強すると気持ちが良いので勉強する。
といったようになります。
社会的行為に関しては,ハーバマス(あるいはハーバーマス)の提唱したものも重要です。
戦略的行為
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コミュニケーション的行為
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自分が有利になるようにふるまう行為。
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相互が了解できるようにコミュニケーションする行為。
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ちょっと話は外れます。
ウェーバーの社会的行為は,4つに分類されます。
この4つというのが国家試験では何とも中途半端です。
問題は5つの選択肢が必要なので,4つでは1つ足りません。
そのために,何かを付け加えなければ問題を作れないのです。
付け加えたものが問題のポイントになることがあります。
それでは今日の問題です。
第29回・問題19 社会理論における行為に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 行為とは,行為者自身にとってどのような意味を持つかとは無関係に,他者から観察可能な振る舞いを意味する。
2 伝統的行為とは,行為対象に対して直接の感情や気分によって行われる振る舞いを意味する。
3 価値合理的行為とは,過去の経験に基づき諸個人の内に身についた知覚・思考・実践行動を生み出す性向を意味する。
4 コミュニケーション的行為とは,他者の選択を計算に入れながら,あるいは他者の選択に影響を与えることによって,自己の目的の実現を目指すものを意味する。
5 行為の意図せざる結果とは,ある意図によって行われた行為自体が,思わぬ影響をもたらすことを意味する。
近年の国試では,社会的行為の出題率はそこそこ高いですが,覚えるのが大変なので,しっかり覚えないで国試に臨む人が多いようです。
この問題の答えは,選択肢5です。
5 行為の意図せざる結果とは,ある意図によって行われた行為自体が,思わぬ影響をもたらすことを意味する。
「行為の意図せざる結果」というなんだかわかりにくいものが出題されていますが,落ち着いて考えると,「あっそういうことってよくあるよね」と思うでしょう。
例えば,家にこもって国試勉強するのは,国試に合格を目的とした行為です。
しかし,その結果,コロナ予防になります。
最近,この学習部屋のアクセス数が例年の3倍になっています。
講義を受けられないことで,ネットで調べることが多くなっているかもしれませんが,この結果が国試ではどのように影響するのかが気になっています。
行為の意図せざる行為といった難しく感じるものもひるまない強い気持ちをもつ受験者が増えるかもしれまないなぁ,と思ったりもします。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 行為とは,行為者自身にとってどのような意味を持つかとは無関係に,他者から観察可能な振る舞いを意味する。
行為は,その人自身に意味があるものです。
2 伝統的行為とは,行為対象に対して直接の感情や気分によって行われる振る舞いを意味する。
行為対象に対して直接の感情や気分によって行われるのは,感情的行為です。
3 価値合理的行為とは,過去の経験に基づき諸個人の内に身についた知覚・思考・実践行動を生み出す性向を意味する。
価値合理的行為は,行為そのものに価値がある行為です。
4 コミュニケーション的行為とは,他者の選択を計算に入れながら,あるいは他者の選択に影響を与えることによって,自己の目的の実現を目指すものを意味する。
他者の選択を計算に入れながら,あるいは他者の選択に影響を与えることによって,自己の目的の実現を目指すのは,戦略的行為です。