今回は,ロジャースが開発した来談者中心療法(クライエント中心療法)を取り上げたいと思います。
この療法におけるセラピストの基本姿勢は,
共感的理解
無条件的肯定的関心
の2つです。
手法は深いのかもしれませんが,社会福祉士の国試で必要な知識はこれで十分です。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題14 カウンセラーの次の発言のうち,来談者中心療法における「受容」の応答例として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「進路選択の相談であれば,隣町にあるキャリア支援センターに行かれたらどうでしょうか。そこでは就職先の紹介のほかに,相談にも乗ってくれますよ」
2 「あなたご自身が体験され苦痛を感じたいくつかの話をお聴きし,私は今あなたが辛い思いをされているのが分かります」
3 「自分探しであちこち旅をされていますが,もうそろそろどこかで落ち着かれた方が良いのではないかと私は思います」
4 「あなたはこの町でもっと人と関われば,この町がきっと好きになりますよ。それはそんなに難しいことではありませんよ」
5 「亡くなられたあなたのお母さんがあなたにはいつも優しかったように,私の母親も私には特別優しかったですねえ。今も涙が出てきそうです」
このような出題をされると受験生は戸惑い焦ります。
ソーシャルワークの受容は勉強したけれど,来談者中心療法における受容は,勉強しなかったと思うからです。
こう思ったら,深みにはまることでしょう。
受容は受容,基本姿勢は,クライエントを受け止めることです。
何も変わるものではありません。
事例問題は,あいまいさがあると不適切問題となってしまうので,正解は明確です。
2 「あなたご自身が体験され苦痛を感じたいくつかの話をお聴きし,私は今あなたが辛い思いをされているのが分かります」
これが正解です。
そのほかの選択肢は,受容している部分がありません。
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