今回から科目は「地域福祉の理論と方法」に移ります。
出題される問題数は,10問です。
社会福祉士の国家試験で,10問出題されるのは
・現代社会と福祉
・地域福祉の理論と方法
・高齢者に対する支援と介護保険制度
の3科目です。
10問出題される理由は
現代社会と福祉は,領域が広いため
高齢者に対する支援と介護保険制度は,旧カリキュラムの「老人福祉論」と「介護概論」を包含する科目であるため
という明確な理由があります。
「地域福祉の理論と方法」は,現代社会の福祉は,地域福祉が重要になっているため,という理由であると考えられますが,ほかの科目と違って,必ずしも10問の科目にする必要はなかったように感じます。
しかし,実はそこが受験生にとっては,ラッキーなことです。
現代社会と福祉は,前回まで見てきたように,現代の福祉ニーズを考えるために,実にさまざまな出題がなされます。
半数は,勉強しなかったものが出題されると考えておいたほうが良いでしょう。
それに比べると,地域福祉の理論と方法は,対応可能な問題が多いと言えます。
ただし,歴史や人名なども出題されるので,そういったものが苦手だという人は,辛い科目かもしれません。
さて,今日の問題です。
第29回・問題32 地域福祉の学説に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 岡村重夫は,生活課題を貨幣的ニードと非貨幣的ニードに分類し,後者に対応する在宅福祉サービスを充実することを重視した。
2 永田幹夫は,地域社会で発生する生活課題の解決を図るために,地域住民の主体的で協働的な問題解決プロセスを重視した。
3 真田是は,在宅福祉サービスを整備することで,社会福祉サービスを必要とする個人や家族の自立を地域社会の場において図ることを重視した。
4 三浦文夫は,生活問題とその解決のための政策,そして地域社会の産業構造の変革も視野に入れた生活の共同的維持・再生産の地域的システムを重視した。
5 右田紀久恵は,地方自治体における福祉政策の充実や住民自治を基底に据えた自治型地域福祉を重視した。
地域福祉は,明確に客観的に「〇〇である」と定義されるタイプのものではないだけに,人によって,考え方が異なります。
そのため,この科目は,人名が多く出現することとなります。
5名の出題頻度は以下の通りです。
人名
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出題数
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岡村重夫
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14回
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永田幹夫
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2回
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真田是
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2回
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三浦文夫
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7回
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右田紀久恵
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2回
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岡村重夫の14回は,突出しています。
必ず覚えておかなければならないのは,岡村重夫だということになります。
次は,三浦文夫です。
そのほかの人は,2回ずつの出題です。
2回というのは,32回実施されている中での2回です。
覚える優先度はかなり低いと言えるでしょう。
この問題の正解は,
5 右田紀久恵は,地方自治体における福祉政策の充実や住民自治を基底に据えた自治型地域福祉を重視した。
岡村や三浦が正解になったわけではないので,かなり難しかったと考えられます。
しかし,この問題は,全部入れ替え問題となっています。
バラバラに出題されるよりも,若干ですが,正解できる確率が高いと言えます。
この問題の入れ替え
選択肢
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誤
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正
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1
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岡村重夫
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三浦文夫
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2
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永田幹夫
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岡村重夫
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3
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真田是
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永田幹夫
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4
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三浦文夫
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真田是
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頻出である岡村と三浦を押さえておけば,選択肢1,2,4は消去できます。
真田是先生は出題頻度は高くはありませんが,実はわかりやすい人です。
社会変革を求めるいわゆる「運動論」を重視した人だからです。
一番ヶ瀬康子先生と同じ系譜に位置づけられます。
もし,真田先生がわからなくても,選択肢は3つ消去できる可能性があるので,正解できる確率は,2分の1です。
半々の確率で正解できることになります。
<今日の一言>
この問題には元ネタが存在しています。
第22回・問題32 地域福祉の概念に関連する学説についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 岡村重夫によれば,地域福祉の構成要素は,コミュニティ・ケア,一般地域組織化活動と福祉組織化活動,予防的社会福祉からなる。
2 ロスマン(Rothman,J.)によれば,コミュニティ・オーガニゼーションのモデルは,伝統的な住民参加を重視するソーシャル・アクションモデルと専門技術過程を重視する社会計画モデルの2つのモデルからなる。
3 三浦文夫によれば,福祉ニーズは貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズに大別され,在宅福祉サービスは前者に対応するものとされた。
4 右田紀久恵によれば,自治型地域福祉とは,地域福祉の推進主体をもっぱら自治体に限られるとした。
5 ティトマス(Titmuss,R.)によれば,イギリスではコミュニティケア概念があまりにも拡大したと批判し,対象を高齢者ケアの領域に限定すべきであるとした。
この問題は,現在のカリキュラムでの初めての国家試験となった第22回のものです。
つまり,多くの受験生が手にする過去3年間の過去問の範囲を大きく超えています。
3年間の過去問の知識では対応不能です。
3年間の過去問の知識では,国家試験に合格できる知識にはなりません。
地道な勉強となりますが,参考書などで基礎的な知識をつけることが欠かせません。
ちなみに,この問題の正解は,選択肢1です。