2019年8月8日木曜日

組織に関する基礎理論~ハーズバーグの動機付け・衛生理論

今回と次回は,モチベーション理論を取り上げたいと思います。
モチベーション(動機付け理論)の基本は,マズローの欲求階層説ですが,これは「心理学理論と心理域支援」で詳しく学ぶことになります。

心理学系のものは人の名前がたくさん出てくるので,人名が苦手だと思う人はいやな感じがするかもしれません。

どうしても覚えられなければ捨てましょう。
しかしそれを判断するのは,もっともっと先のことです。

モチベーション理論が出題されたのは,第23回と第28回の2回のみです。
その2回に共通して出題されたのは,ハーズバーグの理論とブルームの理論です。

そのうちのハーズバーグの理論は,

ハーズバーグの動機付け・衛生理論

と呼ばれるものです。
この理論のポイントは,動機付け要因と衛生要因の2つがあることです。

ハーズバークの動機付け・衛生理論
















それでは,今日の問題です。

第23回・問題113 ミクロ組織論の領域におけるモチベーションに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 モチベーションの内容理論とは,個人が不満を回避する要因の関連性に焦点を当てるものである。

2 モチベーションの過程理論とは,モチベーション要因の階層構造に焦点を当てるものである。

3 ブルーム(Vroom,Ⅴ.)らによる期待理論はモチベーションの内容理論の一つであり,ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機付け・衛生理論(2要因理論)はモチベーションの過程理論の一つである。

4 ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機付け・衛生理論(2要因理論)によれば,仕事の達成や承認,責任などは,職務不満足に関係する衛生要因である。

5 デシ(Deci,E.)の内発的動機付け理論によれば,金銭という外発的報酬を高めることは,作業や仕事などそれ自体から得られる内発的動機付けを低下させる可能性がある。


とても難しい問題だと思います。

しかし,答えは選択肢5

5 デシ(Deci,E.)の内発的動機付け理論によれば,金銭という外発的報酬を高めることは,作業や仕事などそれ自体から得られる内発的動機付けを低下させる可能性がある。

これが正解です。内発的動機付け,外発的動機付けは,心理学理論と心理的支援で詳しく学びます。

内発的動機付けは,対象に興味がある,楽しいから行うといった動機付けです。

外発的動機付けは,ご褒美がもらえるから,やらないと叱られるから,といったことによる動機付けです。

興味・関心があるから始めたことに,そこに報酬がもらえることがわかるとモチベーションは一時的に高まるかもしれませんが,継続力にはつながりにくいと言えます。逆にモチベーションを下げてしまうおそれもあります。

なんとなくわかると思いませんか?

これをアンダーマイニング効果といいます。


それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。


1 モチベーションの内容理論とは,個人が不満を回避する要因の関連性に焦点を当てるものである。

個人が不満を回避する要因の関連性に焦点を当てるのは,ハーズバーグの動機付け・衛生理論です。


2 モチベーションの過程理論とは,モチベーション要因の階層構造に焦点を当てるものである。

モチベーション要因の階層構造に焦点を当てるのは,マズローの欲求階層説です。


3 ブルーム(Vroom,Ⅴ.)らによる期待理論はモチベーションの内容理論の一つであり,ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機付け・衛生理論(2要因理論)はモチベーションの過程理論の一つである。

ブルーム(Vroom,Ⅴ.)らによる期待理論は,モチベーションの過程理論の一つです。

ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機付け・衛生理論(2要因理論)は,モチベーションの内容理論の一つです。

モチベーションの過程理論は,モチベーションを引き出すのはどのようなプロセスなのかを明らかにするものです。

ブルームらの期待理論は,どのくらい頑張れば,どのような結果が得られるのか,そしてそれはどのくらいの価値があるものなのかを明らかにするものです。

モチベーションの内容理論は,どのようなモチベーションが行動を引き起こすのかを明らかにするものです。ハーズバーグの理論で言えば,達成,承認,責任などが満足することで,行動を引き起こすことです。


4 ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機付け・衛生理論(2要因理論)によれば,仕事の達成や承認,責任などは,職務不満足に関係する衛生要因である。

仕事の達成や承認,責任などは,職務満足に関係する動機付け要因です。


<今日の一言>

ハーズバーグの動機付け・衛生理論は,2回出題されながら,2回とも正解になっていません。

それはちょっとホッとするところでもあります。

というのは,ハーズバークの理論を逆手に取り,動機付け要因を満足させると,少々労働条件が悪くても良いのだ,と考える経営者が出てくる可能性があるからです。

しかし,そういったものではなく,動機付け要因と衛生要因をバランスよく対処することで,みんなが気持ち良く,働きやすい職場になります。

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