リーダーシップ理論は,第22回,第23回,第26回,第28回,第29回,第31回国試に出題されています。
出題確率は,60%!!
かなり高率です。
リーダーシップ理論には,3つの流れがあります。
①特性理論
②行動理論
③状況適合理論(コンティンジェンシー理論)
特性理論は,昔のリーダーシップ理論です。
端的に言えば,優れた能力が持つ者がリーダーとなる。
リーダーシップは,生得的だというものです。
優れたリーダーはどのような資質を持っているのか,ということを研究していきます。
しかし,結論は出ることなく,特性理論にとって代わったのが「行動理論」です。
この理論では,優れたリーダーは資質によるものではなく,行動が優れていると考えます。
PM理論,レヴィンらのリーダーシップ理論,マネジリアル・グリッドなどが行動理論となります。
行動理論の特徴は,優れたリーダーシップ行動は「〇〇だ」と提示していることです。
行動理論をもう一歩進めたものが「状況適合理論(コンティンジェンシー理論)」です。
これは,特定のリーダーシップ行動が優れているとするとするのではなく,適切なリーダーシップ行動は,状況によって変わると考えるものです。
フィードラー理論,SL理論,パスゴール理論などがコンティンジェンシー理論となります。
コンティンジェンシー理論の特徴は,先述のように,適切なリーダーシップ行動は状況によって変わるものなので,優れたリーダーシップ行動は「〇〇だ」とは言いません。
今回は,数あるリーダーシップ理論のうちのPM理論を取り上げます。
この理論の提唱者は,大阪大学教授などを務められた三隅二不二先生(故人)です。
リーダーシップ行動の2つの側面に着目したものです。
P行動(目標達成に向けた行動)=P機能
M行動(集団維持に向けた行動)=M機能
PM理論では,それぞれの行動の強弱によって,pm型,Pm型,pM型,PM型に分類し,そのうちP行動もM行動も強いPM型のリーダーシップが最も優れているとされています。
それでは今日の問題です。
第22回・問題114 リーダーシップに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 三隅二不二によれば,リーダーシップM行動は,集団の目標達成に志向したリーダーシップ行動である。
2 三隅二不二によれば,リーダーシップP行動は,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップ行動である。
3 三隅二不二のリーダーシップPM論によれば,一つのリーダーシップの行動には,その程度の相違はあっても,PとMが同時に含まれている。
4 フィードラー(Fiedler,F.E.)によれば,有効なリーダーシップのスタイルは,達成すべき課題の構造や,リーダーとメンバーの関係には影響されないことが望ましい。
5 ヴェーバー(Weber,M.)によれば,すべてのリーダーシップにはカリスマ性が必要である。
この問題は,現在のカリキュラムの第1回の国試である第22回に出題されたものです。
「福祉サービスの組織と経営」は,現在のカリキュラムで加わった科目なので,どんな問題3が出題されるのかわからず,この時受験した人はとても大変だったと思います。
正解は,選択3
3 三隅二不二のリーダーシップPM論によれば,一つのリーダーシップの行動には,その程度の相違はあっても,PとMが同時に含まれている。
リーダーシップ理論は,旧カリキュラム時代には心理学などで出題されていました。
結局,正解だったのは,旧カリ時代も出題されていたPM理論です。
PM理論では,それぞれの行動の強弱によって,pm型,Pm型,pM型,PM型に分類しますが,いずれにもPもMも含まれています。
とんちみたいな問題だと思いませんか?
それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのかを確認していきましょう。
1 三隅二不二によれば,リーダーシップM行動は,集団の目標達成に志向したリーダーシップ行動である。
目標達成は,P行動です。
集団維持が,M行動です。
Pは,performanceのP
Mは,maintenanceのM
パフォーマンス=目標達成機能だと覚えるのは難しいと思いますが,メンテナンス=集団維持機能は覚えやすいでしょう。
2 三隅二不二によれば,リーダーシップP行動は,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップ行動である。
人間関係の緊張を解消するのは,集団維持機能だと思えるので,M行動です。
4 フィードラー(Fiedler,F.E.)によれば,有効なリーダーシップのスタイルは,達成すべき課題の構造や,リーダーとメンバーの関係には影響されないことが望ましい。
この問題では,この選択肢が最も難しかったものだと思います。
フィードラー・・・???
と思ってしまったら,深みにはまります。
フィードラー理論が状況適合理論(コンティンジェンシー理論)であるということがわからなくても,この文章を慎重に読めば,正解になりにくいものであることに気が付きます。
というのは,「望ましい」「望ましくない」という表現です。
この表現がされる選択肢は,要注意なのです。
5 ヴェーバー(Weber,M.)によれば,すべてのリーダーシップにはカリスマ性が必要である。
ヴェーバーは,近年は,ウェーバーと出題されるようになってきました。
ウェーバーの支配システムの類型は
伝統的支配
カリスマ的支配
合法的支配
の3つの類型があります。
特別な資質によるリーダーシップ,ここでいうカリスマ性は,伝統的支配とカリスマ的支配です。
合法的支配は,ルールによる支配です。
カリスマ性は必要とされません。
<今日の一言>
この問題は,先述のように,現行カリキュラムの初回のものです。
そのため,かなり慎重に問題を作ったのではないかと思います。
口の悪い人は,国試は重箱の隅をつつくような出題がされる,という人がいます。
重箱の隅をつつくような出題があったとしたら,それは正解にならないものです。
もしそれが正解になるとしたら,ほかの選択肢を消去できるものです。
ほかの選択肢が消去できないものだったとしたら,それは誰も正解できないものです。
合格・不合格には影響を与えるものではありません。
今日の問題は,ちょこっととんちのような内容のものが正解になりましたが,第1回にふさわしい問題だと思います。
その後のリーダーシップ理論に関する出題のすべての方向性を定めたものとなりました。
ここから少しずつ変化していき,第31回国試に至ります。
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