経営というと現役学生にとっては,とても遠い世界に感じる人もいるかもしれません。
しかし,仕事をしていく中で,必ず経営のことは意識させられることがあると思います。
会社によっては,新入社員研修で社是を何度も復唱させられることもあるでしょう。
社是は,一般的には「経営理念」をいいます。
使命から個人目標までの階層性を図示すると以下のようになります。
「理念」は,方向性を示すもの。
「経営目標」は,理念を具現化していくものです。
左記の図は,上から下へとつながっていきます。
企業を起業する時には,使命(ミッション)があり,その使命や経営理念,経営戦略に賛同した人から資金が集まり,人が集まり,日々の活動になっていきます。
上が長期的で抽象的,下が短期的で具体的なものとなります。
このようになる理由は,例えば,経営戦略を具体的な行動に置き換えるのが経営戦術だからです。
新人研修のときに,社是を復唱させられるのは,日々の行動につながるからです。
会社によっては,使命(ミッション)を復唱させることもあるでしょう。それは,企業の存在価値を表しているからです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題120 経営に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
国試問題としては。下手なつくり方だと思います。
この中の「必要はない」は,すべて消去できてしまいます。
正解は,選択肢5
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのか,確認していきましょう。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
ミッションは,「使命」で,最も上に位置します。
戦略は英語で,ストラテジーといいます。
国試では,情報ストラテジーという用語が出題されたことがあります。
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
経営理念は「社是」という形で,社員への徹底を図る組織があることでわかるように,現場の職員が知っていることは,極めて重要です。日々の行動につながるからです。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
経営理念は,経営戦略,そして具体的な経営戦術として展開されます。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
内部環境,外部環境を分析するSWOT分析という手法があります。
<今日の一言>
今日の問題のうち
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
の3つは,「必要はない」で構成されています。
本当に必要がないものをわざわざ出題する意味はないと思いませんか?
それにもかかわらず,このような出題がされるのは,先に正しい文章を作って,それを否定形にすることで間違い選択肢を生成しているからです。
つまり,これらの元の文章は
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要がある。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要がある。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要がある。
となります。
そう思えれば,残る選択肢は2つ。正解確率は1/2です。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
ミッションがわからなければ,間違うでしょう。
それでも正解確率は1/2です。
選択肢を一つでも多く消去することができたら,正解確率は上がります。
今,勉強を継続していくのはとても大変だと思います。
国試は,正解だとすぐわかる問題はとても少ないです。
多くは,消去法で正解を導き出します。
今勉強していることは,確実に選択肢を消去することにつながっていきます。
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