ナレッジマネジメントとは,個人の知識を組織の知識に変える管理手法のことをいいます。
個人の知識のことは,暗黙知といいます。
組織の知識のことは,形式知といいます。
昔は,先輩の背中を見て学ぶ,といったように知識・技術は人から教わるものではなく,自分で身につけるものでした。
しかし,個々の知識・経験を組織で共有してみんなで学んだ方が,質管理の面で有効です。
それでは今日の問題です。
第29回・問題121 次の記述のうち,個人が暗黙的に行ってきた仕事の仕方(暗黙知)を形式知化する方法に当たるものとして,正しいものを1つ選びなさい。
1 OJTを通して,先輩職員の仕事の仕方を模倣する。
2 各担当係が紙媒体で管理していた業務記録を電子データベース化する。
3 熟練の職員が行う仕事の仕方を文章化し,マニュアルを作る。
4 法人の理念と行動規範を毎日唱和し,職員に周知させる。
5 新人教育でマニュアルの読み合わせを徹底し,マニュアルがなくても仕事ができるようにする。
この年の国家試験を受験した人は,この問題を見てさぞかしびっくりしたのではないでしょうか。
国家試験では,どれだけ勉強しても,勉強したことがない問題は出題されます。
そういった問題は,知識が不足する中,知っていることをつなぎ合わせて工夫して答えを考え出すことが必要です。
決してひるむことなく考えることで,正解できる可能性が高まります。
さて,この問題の正解は,選択肢3です。
3 熟練の職員が行う仕事の仕方を文章化し,マニュアルを作る。
形式知は,知識を形のあるものとして表わすものです。
マニュアル化することが,形式知の代表です。
迷うのは,
5 新人教育でマニュアルの読み合わせを徹底し,マニュアルがなくても仕事ができるようにする。
かもしれません。
マニュアルが作っているのは形式知ですが,そのあとマニュアルを使わなくなるのでは,また暗黙知となります。
仕事の中で新しく学んだことや経験したものをマニュアルに反映すると,形式知となります。
1 OJTを通して,先輩職員の仕事の仕方を模倣する。
4 法人の理念と行動規範を毎日唱和し,職員に周知させる。
どちらも,形になっていないので,形式知ではありません。
2 各担当係が紙媒体で管理していた業務記録を電子データベース化する。
電子データベース化するのは,適切でしょう。
しかし,それを分析して,リスクマネジメントや質管理(クオリティコントロール)に役立てないと,何の意味もありません。
<今日の一言>
難しい問題だと思っても,決してひるまないこと
国家試験は,社会福祉士のあるべき姿を追い求めて出題します。
知識があっても,自分で考えることができない人は,現場では求められていないのです。
また,「時間をかけて考えれば解ける」でもだめです。時間はすべての受験生に平等です。
決められた時間で正解できるようになるためには,訓練が必要です。