アドボカシーは,権利擁護・代弁などと訳されます。
アドボカシーにはさまざまなスタイルがあるので,それぞれを覚えなければなりません。
特に注意が必要なのは,ケースアドボカシーとコーズアドボカシーです。
ケースアドボカシーは,「ケース」という言葉から連想できるように,あるクライエントのためのアドボカシーです。
それに対して,コーズアドボカシーは,その言葉から意味を連想することが難しいと言えます。
第32回国試でも誤認させるように出題しています。
2 コーズアドボカシーとは,クライエントの権利を守るために,法的な手段を用いる活動である。
法的な手段を用いるのは,リーガルアドボカシーといいます。
コーズアドボカシーは,同じ課題を抱えるクライエントの代弁や制度の改善・開発を目指す活動をいいます。
覚え方のコツとしては,原点は対クライエントにあり(ケースアドボカシー),それを普遍化するための活動が「コーズアドボカシー」だと考えるのが良いと思います。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題112 社会資源の開発に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ケースアドボカシーとは,クライエントと同じ状況に置かれている人たちの権利を守るために,新しい資源を開発しようとすることである。
2 小地域開発とは,社会福祉の制度やサービスの創設・改善・維持を目指す活動である。
3 ソーシャルアクションとは,地域の問題について,専門家を入れずに住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにするものである。
4 コーズアドボカシーとは,一人のクライエントの利益と安定した生活をまもるための働きである。
5 社会計画とは,公的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施することである。
びっくりするのは,ロスマンのコミュニティ・オーガニゼーションが出題されたことです。
今までは,この科目ではなく,地域福祉で出題されてきたものです。
しかし,ロスマンのコミュニティ・オーガニゼーションを知らなくても,ケースアドボカシーとコーズアドボカシーを混同しなければ,正解できるように作られた問題です。
正解は,選択肢5です。
5 社会計画とは,公的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施することである。
ほかの社会計画がわからなくても,ほかの選択肢を消去することでこの選択肢が残ります。
それでは解説です。
1 ケースアドボカシーとは,クライエントと同じ状況に置かれている人たちの権利を守るために,新しい資源を開発しようとすることである。
これは,コーズアドボカシーの説明です。
4 コーズアドボカシーとは,一人のクライエントの利益と安定した生活をまもるための働きである。
これは,ケースアドボカシーの説明です。
これからが,いよいよロスマンの領域に突入します。
2 小地域開発とは,社会福祉の制度やサービスの創設・改善・維持を目指す活動である。
小地域開発がわからなくても,ソーシャルアクションはわかるのではないでしょうか。
これは,ソーシャルアクションの説明です。
3 ソーシャルアクションとは,地域の問題について,専門家を入れずに住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにするものである。
この内容がわからなくても,ソーシャルアクションはほかの選択肢で使われているので,ソーシャルアクションではないと推測できます。
「専門家を入れずに」というところが引っ掛かりますが,住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにするものは,小地域開発です。
5 社会計画とは,公的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施することである。
そして,最終的にこれが残ります。
社会計画は,専門家によりどのように資源を配分するかを計画し実施する活動です。
<今日の一言>
ロスマンのコミュニティ・オーガニゼーションに関する説は,この問題を使って整理すると以下のようになります。
小地域開発モデル |
住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにする活動。 |
社会計画モデル |
専門的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施する活動。 |
ソーシャルアクションモデル |
社会福祉の制度やサービスの創設・改善・維持を目指す活動 |