2020年9月17日木曜日

援助を求めないクライエントへの対応

援助を積極的に受けない,あるいは援助を拒否するクライエントのことをインボランタリークライエントと言います。

実際の現場では対応が難しいと思いますが,国家試験は白黒をはっきりつけなければならないので,ポイントさえ押さえれば答えられるように出題します。


それでは今日の問題です。


第29回・問題111 事例を読んで,地域包括支援センターのF社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 地域包括支援センターに勤務するF社会福祉士は,G民生委員よりHさん(85歳,男性)について相談を受けた。Hさんは妻(78歳)と二人で暮らしている。Hさんは近所付き合いもせず,G民生委員が訪ねても,自分たちで何とかやっているから大丈夫だという。しかし,先日,妻が脳梗塞で入院したので改めて様子を見に行くと,Hさんは疲れ切った様子だったので,福祉サービスの利用を勧めたが拒否されたとのことであった。

1 Hさんに電話をして,地域包括支援センターに相談に来るよう勧める。

2 Hさんに援助を求める意思がないので,住民や専門職には協力を求めない。

3 市の担当課と連絡を取って,情報を共有する。

4 Hさんが援助を求めるまで,見守りながら待つ。

5 Hさん宅を訪問し状況を把握する。



事例問題の基本は,初回面接・初回訪問の場合は,まずは状況把握です。

そのため,選択肢5は必ず正解になります。

5 Hさん宅を訪問し状況を把握する。


この問題のポイントは,選択肢4です。

見守りすることが正解になる問題も数多くあります。


しかし,この選択肢が正解にならないのは,ネットワーキングがなく,見守りをするからです。


もし「見守り」をするのであっても,「近所の住民と連携しながら見守りをする」であれば正解になる可能性があります。


実際にどのように住民に協力を求めるのかは,社会福祉士の知恵が発揮されるところです。


事例問題では,その知恵の部分は複雑になるので,そこまで突っ込んでは出題することはまずないでしょう。


もう一つの正解は,

3 市の担当課と連絡を取って,情報を共有する。


市の担当課と連絡を取って情報を共有しても,何も変わらない,と思う人は,この選択肢を選ぶことができません。


しかし,選択肢4と異なり,アクションを起こしています。


<今日の問題>


この問題では描かれていませんが,F社会福祉士が市の担当者に連絡するのは,意味があってのことだと考えられます。


何か変化が起きればよい,という根拠のない期待ではなく,次の手を見据えて行動を起こしているはずです。


一見すると,正解だと誤認してしまいそうな選択肢4の何もせず見守るのは,次の手を見据えたものが見えてきません。


今日の問題は決して難しくありませんが,正解を2つ選ぶ問題は,実はちょっと高度です。


2つめが選びにくいためです。


しかし,この問題のように,ポイントを見極めることで,つまらないミスは防ぐことができるでしょう。


この問題のポイントは,ちゃんとアクションを起こしていることです。

最新の記事

子ども・子育て支援法

  子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...

過去一週間でよく読まれている記事