援助を積極的に受けない,あるいは援助を拒否するクライエントのことをインボランタリークライエントと言います。
実際の現場では対応が難しいと思いますが,国家試験は白黒をはっきりつけなければならないので,ポイントさえ押さえれば答えられるように出題します。
それでは今日の問題です。
第29回・問題111 事例を読んで,地域包括支援センターのF社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
地域包括支援センターに勤務するF社会福祉士は,G民生委員よりHさん(85歳,男性)について相談を受けた。Hさんは妻(78歳)と二人で暮らしている。Hさんは近所付き合いもせず,G民生委員が訪ねても,自分たちで何とかやっているから大丈夫だという。しかし,先日,妻が脳梗塞で入院したので改めて様子を見に行くと,Hさんは疲れ切った様子だったので,福祉サービスの利用を勧めたが拒否されたとのことであった。
1 Hさんに電話をして,地域包括支援センターに相談に来るよう勧める。
2 Hさんに援助を求める意思がないので,住民や専門職には協力を求めない。
3 市の担当課と連絡を取って,情報を共有する。
4 Hさんが援助を求めるまで,見守りながら待つ。
5 Hさん宅を訪問し状況を把握する。
事例問題の基本は,初回面接・初回訪問の場合は,まずは状況把握です。
そのため,選択肢5は必ず正解になります。
5 Hさん宅を訪問し状況を把握する。
この問題のポイントは,選択肢4です。
見守りすることが正解になる問題も数多くあります。
しかし,この選択肢が正解にならないのは,ネットワーキングがなく,見守りをするからです。
もし「見守り」をするのであっても,「近所の住民と連携しながら見守りをする」であれば正解になる可能性があります。
実際にどのように住民に協力を求めるのかは,社会福祉士の知恵が発揮されるところです。
事例問題では,その知恵の部分は複雑になるので,そこまで突っ込んでは出題することはまずないでしょう。
もう一つの正解は,
3 市の担当課と連絡を取って,情報を共有する。
市の担当課と連絡を取って情報を共有しても,何も変わらない,と思う人は,この選択肢を選ぶことができません。
しかし,選択肢4と異なり,アクションを起こしています。
<今日の問題>
この問題では描かれていませんが,F社会福祉士が市の担当者に連絡するのは,意味があってのことだと考えられます。
何か変化が起きればよい,という根拠のない期待ではなく,次の手を見据えて行動を起こしているはずです。
一見すると,正解だと誤認してしまいそうな選択肢4の何もせず見守るのは,次の手を見据えたものが見えてきません。
今日の問題は決して難しくありませんが,正解を2つ選ぶ問題は,実はちょっと高度です。
2つめが選びにくいためです。
しかし,この問題のように,ポイントを見極めることで,つまらないミスは防ぐことができるでしょう。
この問題のポイントは,ちゃんとアクションを起こしていることです。