今日から科目は,「相談援助の理論と方法」です。
この科目で出題される問題数は,21問もあります。
以前,不合格になったある人から話を聞くと「この科目では10問も正解できました」と言っていました。
その話を聞いて,本人には言えませんでしたが,これでは合格は難しいと強く思いました。
事例がたくさんあるから楽勝だと思っていては,この科目で高い得点を取ることができません。
出題基準は,以下のとおりです。
大項目 |
中項目 |
小項目(例示) |
1 人と環境の交互作用 |
1)システム理論 |
一般システム理論、サイバネティックス、自己組織性 |
その他 |
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2 相談援助の対象 |
1)相談援助の対象の概念と範囲 |
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3 様々な実践モデルとアプローチ |
1)治療モデル |
効果と限界の予測 |
2)生活モデル |
効果と限界の予測 |
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3)ストレングスモデル |
効果と限界の予測 |
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4)心理社会的アプローチ |
効果と限界の予測 |
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5)機能的アプローチ |
効果と限界の予測 |
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6)問題解決アプローチ |
効果と限界の予測 |
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7)課題中心アプローチ |
効果と限界の予測 |
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8)危機介入アプローチ |
効果と限界の予測 |
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9)行動変容アプローチ |
効果と限界の予測 |
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10)エンパワメントアプローチ |
効果と限界の予測 |
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4 相談援助の過程 |
1)受理面接(インテーク) |
インテークの意義、目的、方法、留意点 |
その他 |
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2)事前評価(アセスメント) |
アセスメントの意義、目的、方法、留意点 |
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その他 |
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3)支援の計画(プランニング) |
プランニングの意義、目的、方法、留意点 |
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効果と限界の予測 |
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支援方針・内容の説明・同意 |
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介護予防サービス計画 |
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居宅サービス計画 |
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施設サービス計画 |
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サービス利用計画 |
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その他 |
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4)支援の実施 |
支援の意義、目的、方法、留意点 |
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その他 |
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5)経過観察(モニタリング)と評価 |
モニタリングと評価の意義、目的、方法、留意点 |
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その他 |
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6)支援の終結と効果測定 |
支援の終結と効果測定の目的、方法、留意点 |
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その他 |
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7)アフターケア |
アフターケアの目的、方法、留意点 |
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その他 |
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5 相談援助における援助関係 |
1)援助関係の意義と概念 |
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2)援助関係の形成方法 |
コミュニケーションとラポール、自己覚知 |
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その他 |
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6 相談援助のための面接技術 |
1)相談援助のための面接技術の意義、目的、方法、留意点 |
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7 ケースマネジメントとケアマネジメント |
1)ケースマネジメントとケアマネジメントの意義、目的、方法、留意点 |
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8 アウトリーチ |
1)アウトリーチの意義、目的、方法、留意点 |
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9 相談援助における社会資源の活用・調整・開発 |
1)社会資源の活用・調整・開発の意義、目的、方法、留意点 |
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10 ネットワーキング(相談援助における多職種・多機関との連携を含む。) |
1)ネットワーキング(相談援助における多職種・多機関との連携を含む。)の意義、目的、方法、留意点 |
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2)家族や近隣その他の者とのネットワーキング、サービス提供者間のネットワーキング、その他 |
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3)ケア会議の意義と留意点 |
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11 集団を活用した相談援助 |
1)集団を活用した相談援助の意義、目的、方法、留意点 |
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2)グループダイナミックス、自助グループ、その他 |
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12 スーパービジョン |
1)スーパービジョンの意義、目的、方法、留意点 |
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13 記録 |
1)記録の意義、目的、方法、留意点 |
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14 相談援助と個人情報の保護の意義と留意点 |
1)個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の運用 |
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15 相談援助における情報通信技術(IT)の活用 |
1)IT活用の意義と留意点 |
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2)ITを活用した支援の概要 |
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16 事例分析 |
1)事例分析の意義、目的、方法、留意点 |
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17 相談援助の実際(権利擁護活動を含む。) |
1)社会的排除、虐待、家庭内暴力(DV)、ホームレスその他の危機状態にある事例及び集団に対する相談援助事例(権利擁護活動を含む。) |
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確かに事例はあります。
しかし,勉強しなければ得点できないのは,ほかの科目と同じです。
それでは今日の問題です。
第29回・問題98 システム理論に基づくソーシャルワーク実践モデルに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークの主要三方法を統合する視座を示した。
2 システムの中心を個人とみなし,個人の変化に焦点化する方法を示した。
3 クライエントの自己への評価の低さに伴う否定的な感情に注目する視座を示した。
4 現実は社会的に構成されるという見方を示した。
5 精神の力動性に着目し,パーソナリティの変容を目指す視座を示した。
勉強不足の人は,何を言っているのか,見当もつかないでしょう。
ソーシャルワークにおけるシステム理論とは,人と環境の交互作用によって,システムの構成要素が変化していくことに着目してアプローチするものです。
システムの構成要素は,切り離すことができません。
というか,切り離してはいけません。
ここがシステム理論の基本です。ソーシャルワークでは,クライエントに目が向きがちですが,環境に働きかけることでクライエントが変化する,と考えるのがシステム理論だからです。
さて,この問題の正解は,選択肢1です。
1 ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークの主要三方法を統合する視座を示した。
おそらく,この選択肢をすぐ正解だと思える人は多くはないはずです。
ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークの主要三方法を統合することは「統合化」といい,1929年のミルフォード会議報告書に端を発します。
後から考えてみれば,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークに共通する考え方には,システム理論があるように思います。
しかし,それは今だから言えることです。
この問題が難しいのは,ほかの選択肢を消去することで正解にたどり着くタイプの問題だからです。
一つでも引っ掛かる選択肢があれば,正解するのが極めて難しくなります。
こういった問題で必要なのは,シンプルに考えることです。
2 システムの中心を個人とみなし,個人の変化に焦点化する方法を示した。
3 クライエントの自己への評価の低さに伴う否定的な感情に注目する視座を示した。
4 現実は社会的に構成されるという見方を示した。
5 精神の力動性に着目し,パーソナリティの変容を目指す視座を示した。
システム理論と逆なのは,選択肢2です。
個人に焦点化するのではシステム理論ではなくなってしまいます。
それ以外の選択肢も何を述べたものかはわからなくても,少なくてもシステム理論ではないと考えることが消去できるポイントとなります。