今回からの科目は,「福祉サービスの組織と経営」です。
この科目は,現場実戦でなじみのない人が多いため,あまり得意ではない傾向があります。
しかし,そんなに難解に出題されているわけではありません。
そのため,しっかりした知識をもって受験する人とそうでない人の差は大きくつきやすい科目です。
つまり,しっかり勉強した人は得点できて,そうでない人は得点できないということです。
確実な知識を持つ人が合格できる国試として理想的です。
勉強不足の人が合格できる試験は最悪です。
今回は,社会福祉法人制度を取り上げます。
この科目で出題されているのは,社会福祉法人,NPO法人,医療法人の3つです。
その中でも,社会福祉法人は社会福祉事業を主な事業とするだけに社会福祉士としては,必ず覚えておかなければなりません。
さて,社会福祉法人制度は,1951(昭和26)年の社会福祉事業法(現在の社会福祉法)に規定された特別法人です。
社会福祉士になりたいのなら,少なくとも一度は社会福祉法を通読してほしいと思います。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題119 社会福祉法人に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 第二種社会福祉事業の経営主体は,社会福祉法人に限られる。
2 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手である。
3 社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することはできない。
4 社会福祉法人の非営利性とは,収益を出してはならないという意味である。
5 社会福祉法人には,株式会社の法人税率と同じ税率が適用される。
先に正解をいうと
2 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手である。
何たる問題でしょうか。
しかし,こういったものをおろそかにすると,社会福祉法人の本質がわからなくなってしまいますので,注意が必要です。
別な言い方をすれば,社会福祉事業を行わないと社会福祉法人として認可されることはないということです。
社会福祉事業には,第一種と第二種があります。
参考書などを見ると,丁寧な覚え方を書いてあることもありますが,国家試験で種別を問われるのは,共同募金くらいです。
第一種社会福祉事業は,主に入所系サービスが規定されています。
第二種社会福祉事業は,主に通所系サービスが規定されています。
第一種社会福祉事業は,入所系サービスなので,外部の目が届きにくいため,実施主体には高い倫理性が求められます。
共同募金は,入所系サービスではないですが,第一種社会福祉事業です。
ここが引っ掛けられるポイントです。
第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業の細かいものは覚える必要はありません。
この程度の知識で十分戦えます。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 第二種社会福祉事業の経営主体は,社会福祉法人に限られる。
第一種社会福祉事業は,社会福祉法人などに限定されますが,第二種社会福祉事業は,広い実施主体が行うことができます。
第二種は,通所系サービスなので,外部の目が届きやすいのです。
もちろん高い倫理性は求められますが,第一種よりも外部の目が届きやすいので,それ以外の実施主体でも認可されます。
3 社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することはできない。
社会福祉法人は,社会福祉法人同士で合併することができます。
4 社会福祉法人の非営利性とは,収益を出してはならないという意味である。
社会福祉法人の非営利性とは,収益を分配してはならないという意味です。
5 社会福祉法人には,株式会社の法人税率と同じ税率が適用される。
社会福祉法人は,税制面で優遇されています。
優遇されている理由には歴史的背景がありますが,ここでは説明を省略します。
<今日の一言>
今日の問題の正解は,拍子抜けするようなものでしたね。
しかし,正解するのはそれほど簡単ではありません。
確実な知識があってこそ,正解できます。
こういった問題を見ると勉強せずとも正解できると思うかもしれませんが,確実に正解できる知識がなければ,合格することは難しいです。
それをしっかりかみしめて,国試まで頑張りましょう。