社会保障制度を大別すると「社会保険」と「社会扶助」があります。
社会保険 ➡ 社会保険料を主な財源とする。
社会扶助 ➡ 税を財源とする。
1950年社会保障制度審議会勧告による社会保障の方法
保険的方法(社会保険)又は直接公の負担(社会扶助)。社会保障の中心は社会保険制度。それで救済できない者に対しては社会扶助で補完する。
1962年勧告による社会保障施策
社会保障を「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分。
貧困階層に対する施策 ➡ 生活保護制度(社会扶助)
低所得階層に対する施策 ➡ 社会福祉制度(社会扶助)
一般所得階層に対する施策 ➡ 社会保険制度(社会保険)
これらで分かることは,国民の大多数は,一般所得階層なので,社会保障の大部分は社会保険が占めることです。
そのため,社会保障制度の割合が高いので,社会保障財源を見たとき,社会保険料が半分を超えます。国試では何度も「税財源の方が大きい」と出題していますが,大きいのは社会保険料なので,間違いです。
それでは,今日の問題です。
第27回・問題50 社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 1950年の社会保障制度審議会勧告は,日本の社会保障制度について,租税を財源とした社会扶助制度を中心に充実させるとした。
2 1952年の「ILO第102号条約」では,社会保障の給付事由の一つとして,すでに日本の介護保険法にいわれる意味での要介護状態にあることを挙げていた。
3 1962年の社会保障制度審議会勧告は,社会保障制度の体系化を構想し,社会福祉対策を「一般所得階層に対する施策」として位置づけた。
4 1981年の「難民条約」の批准に伴う法整備により,国民年金法,児童手当法,児童扶養手当法,「特別児童扶養手当法」から国籍要件が削除された。
5 1995年の社会保障制度審議会勧告は,後期高齢者医療制度の創設を提言した。
先の解説で分かるものもありますが,分からないものもあるでしょう。
それでは詳しく見ていきましょう。
1 1950年の社会保障制度審議会勧告は,日本の社会保障制度について,租税を財源とした社会扶助制度を中心に充実させるとした。
先述のように,社会保障制度の中心は,社会保険制度です。よって間違いです。
2 1952年の「ILO第102号条約」では,社会保障の給付事由の一つとして,すでに日本の介護保険法にいわれる意味での要介護状態にあることを挙げていた。
ILO第102号条約の正式名称は「社会保障の最低基準に関する条約」と言います。
社会保障の給付事由は「医療」「疾病」「失業」「老齢」「家族」「出産」「廃疾」です。介護は入っていません。よって間違いです。
ちょっと難しく思うかもしれませんが,こんな時に想像力が必要です。
同じ年には,こんな問題も出題されています。
第27回・問題23
社会的リスクに関する次の記述のうち,「ベヴァリッジ報告」で想定されていなかったものを1つ選びなさい。
1 疾病により労働者の収入が途絶えるおそれ
2 勤務先の倒産や解雇により生計の維持が困難になるおそれ
3 老齢による退職のために,稼働収入が途絶えるおそれ
4 保育や介護の社会化が不充分なため,仕事と家庭の両立が困難になるおそれ
5 稼得者の退職や死亡により被扶養者の生活が困窮するおそれ
答えは選択肢4です。
「1942(いくよに)伝えられるべヴァリッジ報告」といった覚え方では,まったく歯が立ちません。
歴史の試験ではないので,年号を覚える勉強法はまったく意味を持ちません。
だいたいいつの時代なのか,ということが理解できていれば十分です。
3 1962年の社会保障制度審議会勧告は,社会保障制度の体系化を構想し,社会福祉対策を「一般所得階層に対する施策」として位置づけた。
貧困階層に対する施策 ➡ 生活保護制度(社会扶助)
低所得階層に対する施策 ➡ 社会福祉制度(社会扶助)
一般所得階層に対する施策 ➡ 社会保険制度(社会保険)
よって間違いです。
4 1981年の「難民条約」の批准に伴う法整備により,国民年金法,児童手当法,児童扶養手当法,「特別児童扶養手当法」から国籍要件が削除された。
これが正解です。
5 1995年の社会保障制度審議会勧告は,後期高齢者医療制度の創設を提言した。
95年勧告は,21世紀に向けて「広く国民に健やかで安心できる生活を保障することが社会保障の基本的理念である」としています。
提言したのは,後期高齢者医療制度の創設ではなく,公的介護保険制度です。よって間違いです。時代でわかるでしょう。
社会保障制度審議会は何度も勧告を行いましたが,国家試験に出題されるのは,50年勧告,62年勧告,95年勧告の3つだけです。
それぞれは極めて重要です。しっかり覚えておきましょう。
※PCの調子が悪く,朝一番に更新できなかったことをお許しください。
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