2017年11月14日火曜日

解答テクニック「あいまい表現に正解多し」 リターンズ!!

第25回国試はとても難しい試験でした。

合格基準点72点,合格率18.8%というそれまでにはない結果となりました。

この当時の特徴は,問題文の文字数がとても長かったことです。

おそらく文字数制限はあったのだと思いますが,そんなことは関係なくどんどん長くなっていったのです。

長い問題文は,引っ掛けポイントをいくつも作れますし,おかしな言い回しで受験者を混乱させることもできます。

そのため,かなり勉強して受験した人でも簡単に点数は取れないものでした。


今は文字数が少なくなり,問題文もシンプルになってきたので,しっかり勉強した人は点数が取れるようになってきています。

だからといって,勉強が少ない人も点数が取れるほど簡単な試験ではないことは事実です。

これらによって,受験者の点数にばらつきが生じているようです。

勉強をしっかりした人は,合格基準点を超えやすくなっています。国試は決して深掘りして来ないので,シンプルに考えて行きましょう。


以前,中学受験を目指す小学生の話を書きました。有名進学塾の小学生に国試問題を解かせたところ,半分の問題が解けた,という話です。

これは,知識がなくても,問題が解けるものが半数近くある,ということを示しています。

変に知識がない分,シンプルに問題に取り組むことができることもあるかもしれません。


第31回以降の国試を受験する予定の方へのアドバイス

有名中学の入試問題は,単純な知識を問うような問題は少ないです。
電車の中などに入試問題が広告に使われているので見たことのある人もいると思いますが,記述式の出題になっています。

たとえば「疎開とは何か,100字以内で答えなさい」といった問題です。

社会福祉士の問題は,決して深掘りしてきません。

しかし,理論が中心の科目は,表現をいろいろ変えて出題されるので,丸暗記は通用しにくいです。

そこでのアドバイスです。理論系は,自分の言葉で答えられるようにしておきましょう。

法制度は短期速習ができますが,理論系が理解に時間がかかるのが特徴です。
今はたっぷり時間があるので,ひと手間かけた勉強をしておきたいです。


さて,話は戻りますが,国試は不適切問題を出さないために,正しい選択肢は確実に正しく,間違い選択肢は確実に間違いにしなければなりません。

作問がうまくない人が作成した問題は,不自然な言い回しになります。

今日の問題は,そんな表現のオンパレードです。


第25回・問題146

障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行う職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 職場適応援助者の就労支援の対象となる障害者は,障害者手帳を持つ者に限られる。

2 職場適応援助者は,地域障害者職業センターだけでなく,社会福祉法人等が設置する就労継続支援B型事業所や民間企業にも配置されている場合がある。

3 職場適応援助者の養成研修及び支援スキル向上研修を行っているのは,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構だけである。

4 職場適応援助者による就労支援を受ける障害者は,障害者総合支援法に基づき,それに要する費用について,本人の収入に応じて一部負担が求められる。

5 職場適応援助者の資格要件については,障害者職業カウンセラーと同様,「障害者雇用促進法」で規定されている。


何に気づきましたか? 

選択肢の問題だけではなく,設問自体も摩訶不思議ではないでしょうか。

問題文にわざわざジョブコーチの役割を書き込まなくても良いと思いませんか。

職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
これでよいはずです。

障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行う

をつけた意味を考えると,正解選択肢を選ばせないためのカムフラージュではないかと感じてしまいます。

それでは,詳しく見て行きますね。ただし,こんな変な問題はもう出題されないでしょう。



1 職場適応援助者の就労支援の対象となる障害者は,障害者手帳を持つ者に限られる。



「限られる」「のみ」など,限定した表現は,国試で間違い選択肢を作る場合の常とう手段です。

もちろん限られません。よって間違いです。



2 職場適応援助者は,地域障害者職業センターだけでなく,社会福祉法人等が設置する就労継続支援B型事業所や民間企業にも配置されている場合がある。



ジョブコーチは以下の3類型があります。

地域障害者職業センター配置型 ➡ 地域障害者職業センターに配置されるジョブコーチ。
第1号職場適応援助者 ➡ 福祉施設に配置されるジョブコーチ。
第2号職場適応援助者 ➡ 民間企業等の事業主が配置するジョブコーチ。


問題文は,第1号,第2号ジョブコーチのことを述べています。よって正解です。

先に書いた,設問です。

障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行う

と書かれているので,勉強不足の人は,「福祉事業所や民間事業所には配置されない」と考えた人もいるかもしれません。

それが正解隠しのカムフラージュという意味です。それよりも,ここで着目してほしいのは,「配置されている場合がある」という表現です。


このブログでは,何度も紹介している

あいまい表現に正解多し

を覚えていますでしょうか。

言い切り表現の場合(例:配置されないなど)は,数多くの事象の中に,たった1回でもその事象が現れると命題は成立しません。

その逆に

あいまい表現の場合(例:配置されている場合がある)は,数多くの事象の中に,たった1回でもその事象が現れると命題が成立します。

それが「あいまい表現に正解多し」のからくりです。

しっかり押さえておきましょう。



3 職場適応援助者の養成研修及び支援スキル向上研修を行っているのは,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構だけである。




「だけ」「のみ」「限られる」は,選択肢1で紹介しましたように,間違い選択肢になることが多いです。

もちろんこの場合でも,同機構以外でも実施しています。よって間違いです。

ただし,「のみ」がついていても正解になることがあります。例えば,生活保護における保護施設の設置主体などがそうです。


4 職場適応援助者による就労支援を受ける障害者は,障害者総合支援法に基づき,それに要する費用について,本人の収入に応じて一部負担が求められる。


障害者の就労支援には,一般就労を目指す「障害者雇用促進法」と,福祉的就労を目指す「障害者総合支援法」の2つがあります。

障害者総合支援法の就労支援は,就労移行支援事業と就労継続支援事業の2つしかありません。そのほかの就労支援は,ほぼ障害者雇用促進法によるものです。

ジョブコーチは,障害者雇用促進法に基づく支援であり,障害者総合支援法のように一部負担は求められません。よって間違いです。


ジョブコーチを利用する場合,その費用負担がどうなっているかは分からない。どうしようとあわててしまう人もいるかもしれません。


ここでヒントです。

法律は,きっかりその領域が決められています。

ほかの領域を犯すことはありません。その場合は,根拠法に規定されます。

つまり,ジョブコーチは,障害者雇用促進法が根拠法なので,障害者総合支援法には基づかないということです。これもしっかり覚えておきましょう。



5 職場適応援助者の資格要件については,障害者職業カウンセラーと同様,「障害者雇用促進法」で規定されている。


これも下手な文だと思います。

嘘をつく犯罪者と同じようなにおいがします。

犯罪者に限らず,人は嘘をつくときは,知らず知らずに饒舌になる傾向があることは皆さん知っていることでしょう。

この選択肢は単純に

職場適応援助者の資格要件は,「障害者雇用促進法」で規定されている。

といった文章で事足ります。

障害者職業カウンセラーと同様といった表現は,聞きもしないのに余計なことを言って,疑惑を深める容疑者のようなものです。

もし,この選択肢が

職場適応援助者の資格要件は,「障害者雇用促進法」で規定されている。

という文章なら,勉強不足の人は,これを正解に選んだ人が多かったのではないか,と予測できます。

正しくは,第1号,第2号ジョブコーチは資格要件がありますが,配置型ジョブコーチの資格要件は特に定められていません。

この理由はよく分かりませんが,第1号・第2号は,センター以外に配置されるので,質がより求められるということがあるのではないでしょうか。


<今日のまとめ>

今日の問題の中では,選択肢5はものすごく細かい出題だと思います。

しかし,ちゃんと勉強した人なら,ジョブコーチは3類型があることを知っているはずなので,こんなところに引っ掛けられることなく,正解できたと思います。

今勉強するととても細かい出題のように感じますが,それは間違い選択肢だからです。正解選択肢は意外とシンプルなことが多いのです。

今の問題文は,シンプルな言い回しになってきているので,しっかり勉強すると得点できるように出題されています。それを信じて,一歩一歩進んでいきましょう!! 

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