今回から数回にわたって,倫理的ジレンマの事例問題を解いてみたいと思います。
それでは,前説なしに今日の問題です。
精神保健福祉士
第19回・問題21
精神科病院を退院したAさんは,次第に昼夜逆転した生活となり,バランスの取れた食事もできていない状況にあった。精神科病院のB精神保健福祉士は,受診時にAさんと相談室で面接を行い,生活のリズムを整えることがAさんのために必要だと考え,デイケアの利用を勧めた。しかし,Aさんは,「デイケアには行きたくない。自分は退院しているし,やりたいことがある」と語った。B精神保健福祉士はAさんの思いを聞きつつも,Aさんの生活に不安を感じ,これからどのように関わっていけばよいか悩んだ。
次のうち,B精神保健福祉士が抱く倫理的ジレンマとして,適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントの利益と所属機関の利益
2 秘密保持とプライバシー
3 自己決定とパターナリズム
4 バウンダリーとクライエントの利益
5 専門職的価値と個人的価値
倫理的ジレンマは,このようなスタイルで出題されます。
しっかり考えないと正解できません。
この事例の場合のポイント
Aさんは,「デイケアには行きたくない。自分は退院しているし,やりたいことがある」と語った。
B精神保健福祉士はAさんの思いを聞きつつも,Aさんの生活に不安を感じ,これからどのように関わっていけばよいか悩んだ。
正解は,選択肢3です。
自己決定によれば,デイケアには行かないということになります。しかし,B精神保健福祉士は,それでは生活に不安を感じています。
パターナリズムは,専門的立場でこのようにした方が良い,と考えることです。自己覚知ができていないと知らず知らずにパターナリズム的なかかわりになりがちなので注意が必要です。
なお,バウンダリーとは,自分と人の境界線のことをいいます。
バウンダリーがあいまいになると,こうしてくれるだろうといったように,人に過剰な期待を寄せてしまうので,これも注意が必要です。