更生緊急保護
刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後,親族からの援助を受けることができず,若しくは公共の衛生福祉に関する機関その他の機関から医療,宿泊,職業その他の保護を受けることができない場合又はこれらの援助若しくは保護のみによっては改善更生することができないと認められる場合に,緊急に保護する制度です。
期間
6か月を超えない範囲内です。ただし,必要だと認められる場合は,金品の給与又は貸与及び宿泊場所の供与は6か月,それら以外は1年6か月を超えない範囲で延長することができます。
更生緊急保護の対象
・懲役,禁錮又は拘留の刑の執行を終わった者 ・懲役,禁錮又は拘留の刑の執行の免除を得た者 ・懲役又は禁錮につき刑の全部の執行猶予の言渡しを受け,その裁判が確定するまでの者 ・懲役又は禁錮につき刑の一部の執行猶予の言渡しを受け,その猶予の期間中保護観察に付されなかった者であって,その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わったもの ・検察官が直ちに訴追を必要としないと認めた者 ・罰金又は科料の言渡しを受けた者 ・労役場から出場し,又は仮出場を許された者 ・少年院から退院し,又は仮退院を許された者(保護観察に付されている者を除く) |
更生緊急保護は,保護観察に付された者を対象としていません。
その理由は,保護観察に付された者には,「応急の救護」という制度で対応するためです。
なお,更生緊急保護は,本人の申し出があり,保護観察所の長が必要だと認めた場合に限り実施されます。
保護観察所の長が必要だと思っていても本人の申し出がないと実施されません。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題148
更生緊急保護の対象者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 起訴猶予を受けた者は,更生緊急保護を受けることができない。
2 罰金刑の言渡しを受けた者は,更生緊急保護を受けることができない。
3 懲役・禁錮の刑につき執行猶予の言渡しを受けた者は,更生緊急保護を受けることができない。
4 懲役・禁錮の刑につき仮釈放中の者は,更生緊急保護を受けることができない。
5 懲役・禁錮の刑の執行を終わった者は,更生緊急保護を受けることができない。
なかなか高度な問題です。これらのうちから,保護観察に付される者を探し出さないといけないからです。
それでは,解説です。
1 起訴猶予を受けた者は,更生緊急保護を受けることができない。
起訴猶予を受けた者は,対象です。
2 罰金刑の言渡しを受けた者は,更生緊急保護を受けることができない。
罰金刑の言渡しを受けた者は,対象です。
3 懲役・禁錮の刑につき執行猶予の言渡しを受けた者は,更生緊急保護を受けることができない。
執行猶予の言渡しを受けた者は,対象です。
ただし,執行猶予でも保護観察付の執行猶予の場合は,対象となりません。
4 懲役・禁錮の刑につき仮釈放中の者は,更生緊急保護を受けることができない。
これが正解です。
仮釈放中は,必ず保護観察に付されるからです。
5 懲役・禁錮の刑の執行を終わった者は,更生緊急保護を受けることができない。
刑の執行を終わった者は,対象です。
〈今日のポイント〉
更生緊急保護は,保護観察に付されている者は対象としません。
保護観察に付されている者には,応急の救護があるからです。