今回,医療観察法が定める医療観察制度を学びます。
法の目的
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し,その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより,継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り,もってその社会復帰を促進すること。 |
社会復帰が目的であることを忘れてはなりません。
医療観察制度の対象となる他害行為
殺人 強盗 放火 不同意性交等 不同意わいせつ 傷害
それでは,今日の問題です。
第33回・問題149
「医療観察法」が定める医療観察制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 精神保健観察は,刑法上の全ての犯罪行為に対して適用される制度である。
2 医療観察制度における医療は,法務大臣が指定する指定入院医療機関又は指定通院医療機関で行われる。
3 医療観察制度による処遇に携わる者は,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者が円滑に社会復帰をすることができるように努めなければならない。
4 精神保健観察に付された者には,保護司によって「守るべき事項」が定められる。
5 精神保健観察に付される期間は,通院決定又は退院許可決定があった日から最長10年まで延長できる。
(注) 「医療観察法」とは,「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。
医療観察制度の処遇は,入院,あるいは通院によって行われます。
通院の場合は,治療を受けているかなどを確認する精神保健観察に付されます。
精神保健観察を行うのは,保護観察所に配置されている社会復帰調整官です。
それでは解説です。
1 精神保健観察は,刑法上の全ての犯罪行為に対して適用される制度である。
医療観察制度の対象となる重大な他害行為は,殺人,強盗,放火,不同意性交等,不同意わいせつ,傷害です。
2 医療観察制度における医療は,法務大臣が指定する指定入院医療機関又は指定通院医療機関で行われる。
指定医療機関の指定は,厚生労働大臣が行います。
なお,指定入院医療機関は,国,都道府県,特定地方独立行政法人が開設する病院のうちから指定されます。
指定通院医療機関は,そういった限定はありません。
3 医療観察制度による処遇に携わる者は,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者が円滑に社会復帰をすることができるように努めなければならない。
これが正解です。
法の目的を理解していれば,これを選べるのではないかと思います。
4 精神保健観察に付された者には,保護司によって「守るべき事項」が定められる。
医療観察制度の「守るべき事項」は,更生保護制度の一般遵守事項のように,対象者すべてが遵守するものです。特定の者に定められる特別遵守事項のようなものはありません。
〈守るべき事項〉
・一定の住居に居住すること。 ・住居を移転し,又は長期の旅行をするときは,あらかじめ,保護観察所の長に届け出ること。 ・保護観察所の長から出頭又は面接を求められたときは,これに応ずること。 |
5 精神保健観察に付される期間は,通院決定又は退院許可決定があった日から最長10年まで延長できる。
精神保健観察の期間は,当該決定があった日から起算して3年間です。ただし,裁判所は,2年を超えない範囲で延長することができます。
この場合の裁判所は,家庭裁判所ではなく,地方裁判所です。