少年司制度は,少年法,少年院法,少年鑑別所法などによって形成されています。
少年法の少年は,20歳未満と定められていますが,少年犯罪の増加や凶悪化があると,引き下げの声が高まります。
これまでに何度も引き下げが検討されてきましたが,成年年齢が18歳以上となった現在も少年法の少年は20歳のままです。
その代わりに,18歳,19歳の少年は,特定少年となり,18歳未満の少年とは異なる処遇が行われます。
見る人から見れば妥協の産物かもしれませんが,20歳を死守したのは,司法関係者のファインプレーだったと思います。
少年は性格の矯正を行うことで更生できる可能性があるからです。
少年法の目的
少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずること。 |
少年院法の目的
少年院の適正な管理運営を図るとともに、在院者の人権を尊重しつつ、その特性に応じた適切な矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行うことにより、在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ること。 |
少年鑑別所法の目的
少年鑑別所の適正な管理運営を図るとともに、鑑別対象者の鑑別を適切に行うほか、在所者の人権を尊重しつつ、その者の状況に応じた適切な観護処遇を行い、並びに非行及び犯罪の防止に関する援助を適切に行うこと。 |
少年法と少年院法は,矯正教育が強調されていることが特徴です。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題148
少年司法制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 少年法は,家庭裁判所の審判に付すべき少年として,犯罪少年,触法少年,虞犯少年,不良行為少年の4種類を規定している。
2 家庭裁判所は,18歳未満の少年については,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これを審判に付することができる。
3 少年鑑別所は,警察官の求めに応じ,送致された少年を一定期間収容して鑑別を行う施設である。
4 少年院は,保護処分若しくは少年院において懲役又は禁錮の刑の執行を受ける者に対し,矯正教育その他の必要な処遇を行う施設である。
5 家庭裁判所が決定する保護処分は,保護観察,児童自立支援施設又は児童養護施設送致,少年院送致,検察官送致の4種類である。
「刑事司法と福祉」は,旧カリキュラムの「更生保護制度」をグレードアップしたものです。
新しい内容が多く含まれているため,旧カリ時代に出題されていた内容は,完璧にしておきたいです。
それでは解説です。
1 少年法は,家庭裁判所の審判に付すべき少年として,犯罪少年,触法少年,虞犯少年,不良行為少年の4種類を規定している。
審判に付すべき少年
犯罪少年 |
罪を犯した少年 |
触法少年 |
14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年 |
虞犯少年 |
その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年 |
不良行為少年というものはありません。
2 家庭裁判所は,18歳未満の少年については,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これを審判に付することができる。
18歳未満の少年については,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これを審判に付することができるのは,触法少年と虞犯少年です。児童福祉法が優先されるためです。
犯罪少年は,少年法の適用を受け,全件家庭裁判所に送致されます。そして家庭裁判所の審判を受けます。
3 少年鑑別所は,警察官の求めに応じ,送致された少年を一定期間収容して鑑別を行う施設である。
少年鑑別所が,鑑別を行うのは,以下の者に鑑別を求められた場合です。警察官は含まれません。
・家庭裁判所
・地方更生保護委員会
・保護観察所の長
・児童自立支援施設の長
・児童養護施設の長
・少年院の長
・刑事施設の長
これは詳しく覚える必要はありません。
4 少年院は,保護処分若しくは少年院において懲役又は禁錮の刑の執行を受ける者に対し,矯正教育その他の必要な処遇を行う施設である。
これが正解です。
少年院の種類
種類 |
対象 |
入院者 |
第一種 |
保護処分に付された少年 |
心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの。 |
第二種 |
保護処分に付された少年 |
心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの。 |
第三種 |
保護処分に付された少年 |
心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの。 |
第四種 |
刑の執行を受ける少年 |
少年院において刑の執行を受ける者。 ※少年刑務所は16歳以上が対象のため。16歳になると少年刑務所に移る。 |
第五種 |
保護処分に付された特定少年 |
遵守すべき事項を遵守しなかった者。 |
なお,懲役又は禁錮の刑は,2025年6月から「拘禁刑」となります。
5 家庭裁判所が決定する保護処分は,保護観察,児童自立支援施設又は児童養護施設送致,少年院送致,検察官送致の4種類である。
保護処分の種類
・保護観察
・児童自立支援施設又は児童養護施設送致
・少年院送致
の3種類です。
検察官送致(逆送致)は,保護処分ではなく,家庭裁判所が刑事罰が必要だと判断した場合に送致するものです。
非行少年のうち,検察官送致(逆送致)されることがあるのは,犯罪少年のみです。