2024年10月10日木曜日

少年司法における家庭裁判所調査官の役割

 

家庭裁判所調査官は,裁判所法に規定されている専門職です。

 

家庭裁判所が扱う事件の調査を行います。

 

少年事件における家庭裁判所調査官の業務

非行を犯したとされる少年とその保護者に会って事情を聴くなどして,少年が非行に至った動機,原因,生育歴,性格,生活環境などの調査を行います。そして,必要に応じ少年の資質や性格傾向を把握するために心理テストを実施したり,少年鑑別所,保護観察所,児童相談所などの関係機関と連携を図りながら,少年が立ち直るために必要な方策を検討し,裁判官に報告します。

この報告に基づいて,裁判官は,少年の更生にとって最も適切な解決に向けて審判を行います。

 

試験観察

裁判官が最終処分を決めるため必要があるときに,しばらくの間,少年の様子を見守るもの。

継続的に少年を指導したり,援助しながら少年の行動や生活状況を観察する。

 

出典:裁判所ホームページ「家庭裁判所調査官」

https://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/tyosakan/index.html

 

それでは,今日の問題です。

 

25回・問題149 

少年司法制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 少年法では少年を20歳に満たないものと規定しており,少年の社会内処遇及び指導について,18歳未満の者は児童相談所,18歳以上20歳未満の者は保護観察所が所管する。

2 家庭裁判所で決定する保護処分のうち,保護観察に付する決定の場合は保護観察官が,少年院送致の場合は家庭裁判所調査官が,その少年の処分終了まで継続して担当する。

3 家庭裁判所の審判に付すべき少年について,家庭裁判所は保護観察官に命じて,少年,保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行わせることができる。

4 家庭裁判所は,事件に関する調査及び観察のために,警察官・保護観察官,保護司,児童福祉司又は児童委員に対して,必要な援助をさせることができる。

5 少年法の基本理念に少年の健全育成があるが,これは児童自立支援施設又は児童養護施設に送致された少年に適用され,保護観察に付された少年には適用されない。

 

ものすごく難易度が高い問題です。この問題が出題された当時,正解できた人は少なかったかもしれません。

 

それでは解説です。

 

1 少年法では少年を20歳に満たないものと規定しており,少年の社会内処遇及び指導について,18歳未満の者は児童相談所,18歳以上20歳未満の者は保護観察所が所管する。

 

民法改正によって,成年年齢が18歳となっていますが,少年法の少年は,20歳のままです。

 

児童相談所は,更生保護法にはかかわりません。

 

更生保護法にかかわるのは,保護観察所です。

 

2 家庭裁判所で決定する保護処分のうち,保護観察に付する決定の場合は保護観察官が,少年院送致の場合は家庭裁判所調査官が,その少年の処分終了まで継続して担当する。

 

家庭裁判所調査官が担当するのは,非行少年の処分を決定する際の調査です。

 

少年院送致が決定されると,少年院に配置される法務教官,法務技官,福祉専門官などが担当します。

 

3 家庭裁判所の審判に付すべき少年について,家庭裁判所は保護観察官に命じて,少年,保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行わせることができる。

 

調査を行うのは,家庭裁判所調査官です。

 

4 家庭裁判所は,事件に関する調査及び観察のために,警察官・保護観察官,保護司,児童福祉司又は児童委員に対して,必要な援助をさせることができる。

 

これが正解です。少年法では,「家庭裁判所は、調査及び観察のため、警察官、保護観察官、保護司、児童福祉司又は児童委員に対して、必要な援助をさせることができる」と規定されています。

 

5 少年法の基本理念に少年の健全育成があるが,これは児童自立支援施設又は児童養護施設に送致された少年に適用され,保護観察に付された少年には適用されない。

 

少年法の基本理念である「少年の健全な育成」は,すべての少年に適用されるものです。

そうでなければ「法の基本理念」にはなりません。

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