今回は,ソーシャルワークにおけるエコシステムを学びます。
エコシステムとは,人と環境のことです。
人と環境の交互作用に着目したアプローチ法は,エコロジカル・アプローチといいます。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題100
事例を読んで,エコシステムの視点に基づくEさんへのFソーシャルワーカー(社会福祉士)の対応として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
U里親養育包括支援(フォスタリング)機関のFソーシャルワーカーは,里親のEさん(42歳,女性)宅へ訪問した際,委託を受け養育しているGちゃん(10歳,女児)のことで相談を受けた。Gちゃんは,最近無断で学校を休み,友達のHちゃんと万引きをした。EさんはGちゃんに注意し,諭したが,Gちゃんは二日前に再び万引きをした。Eさんは夫に心配を掛けてはすまないと思い,一人で対処してきたが,自分の里親としての力のなさに失望している。
1 「Gちゃんの万引きがやまなければ,児童相談所に委託の解除を相談してはいかがでしょうか」
2 「Gちゃんが通う学校の先生に,Gちゃんの学校での様子について尋ねてみてはいかがでしょうか」
3 「Hちゃんとの付き合いが,Gちゃんの問題を引き起こしているのでしょう」
4 「お一人で悩まれずに,Gちゃんのことをご夫婦で話し合われてはいかがでしょうか」
5 「Gちゃんに欲しい物を尋ね,買ってあげてはいかがでしょうか」
問題づくりが下手なので,エコシステムの視点を意識せずとも正解できてしまう問題です。
このような問題は,今後は出題されないと思います。
こういったタイプの問題では,おそらく,対応は不適切ではなくても,設問の条件と異なるために正解にならないという問題を出題するのではないかと思います。
さて,この問題の正解は,選択肢2と4です。
2 「Gちゃんが通う学校の先生に,Gちゃんの学校での様子について尋ねてみてはいかがでしょうか」
4 「お一人で悩まれずに,Gちゃんのことをご夫婦で話し合われてはいかがでしょうか」
選択肢2は,学校という環境に着目しています。
選択肢4は,両親という環境に着目しています。
1 「Gちゃんの万引きがやまなければ,児童相談所に委託の解除を相談してはいかがでしょうか」
3 「Hちゃんとの付き合いが,Gちゃんの問題を引き起こしているのでしょう」
5 「Gちゃんに欲しい物を尋ね,買ってあげてはいかがでしょうか」
この3つのうち,エコシステムに基づくものに近いのは,選択肢3です。
Hちゃんという環境に着目しています。しかし,そのあとの「Gちゃんの問題を引き起こしているのでしょう」と締めくくっているところが,エコシステムとは異なります。
これは,原因(Hちゃんとの付き合い) → 結果(問題を引き起こしている)と直線的な関係で考える医学モデルです。
エコシステムの視点ではあれば,GさんがHちゃんにも影響を与えていると考えます。それが「交互作用」です。