疑似市場(準市場)とは,公的サービスの提供において部分的に市場メカニズムを取り入れた方式の総称です。
疑似市場が問われた場合,日本の介護保険制度を思い浮かべることをおすすめします。
介護保険制度では,市場に参入することは比較的自由にできますが,提供するサービスの価格は介護報酬という公定価格です。
それでは今日の問題です。
第28回・問題29 福祉サービスにおける準市場(疑似市場)に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 利用者のサービス選択を支援する仕組みが必要である。
2 サービスの質のモニタリングは不要である。
3 同一地域におけるサービスの供給者は1つに限定される。
4 営利事業者やNPOが参入できないよう,規制される。
5 自治体が,福祉サービスの購入者となることが前提である。
さて,介護保険制度を思い浮かべたでしょうか。
それで,消去できる選択肢があります。
2 サービスの質のモニタリングは不要である。
3 同一地域におけるサービスの供給者は1つに限定される。
4 営利事業者やNPOが参入できないよう,規制される。
残るは2つです。
1 利用者のサービス選択を支援する仕組みが必要である。
5 自治体が,福祉サービスの購入者となることが前提である。
介護保険制度を考えたとき,介護サービスの公表制度や第三者評価制度があります。
これらは,「利用者のサービス選択を支援する仕組み」に当たります。
そういうことで,正解は選択肢1です。
1 利用者のサービス選択を支援する仕組みが必要である。
繰り返しになりますが,利用者のサービス選択を支援する仕組みとして,介護保険制度では介護サービスの公表制度や第三者評価制度が設けられています。
5 自治体が,福祉サービスの購入者となることが前提である。
これがどうもよくわからないものでしょう。
国家試験を解説しようと思うと,答えは分かるのだけれど,解説に困るというものがあります。
ネットで調べてみると,準市場で福祉サービスを購入するのは,イギリスの「国民保健サービス及びコミュニティケア法」のように,原則は中央政府であるようです。
イギリスでは,中央政府がサービスを購入することで財政に責任を持ち,民間がサービスを提供する,というサービスの購入者と提供者を分離させました。
ということで,準市場では中央政府がサービスを購入するのが前提だとしておきましょう。
しかしおそらくもう二度と出題されないように思います。